東レ(株)は、独自の機能性高分子設計技術を駆使し、初期長に対して10倍に引き伸ばしても破断せずに復元する、皮膚のような柔軟性を有する新規の生体吸収性ポリマーを創出した。加えて、このポリマーの加水分解による分解速度を10倍に向上させる技術も見出した。今後、この技術を適用したポリマーを用いた再生医療などの医療用途の開発や各種産業用途への拡大を推進する。

 従来、生体吸収性ポリマーとして知られるポリ乳酸やポリグリコール酸は、結晶を形成しやすい特性(結晶性)があり、硬くなってしまうことから、柔軟性と引き伸ばしても破断しにくい特性(耐破断性)を両立させることは困難であった。

 東レは、乳酸の二量体であるラクチドとカプロラクトンを用いた、特殊な共重合方法を開発し、初期長の10倍に引き伸ばしても破断せずに復元する柔軟性と耐破断性を両立さた。更に、本ポリマーの加水分解を高度に制御することで分解性を10倍向上させた生体吸収性ポリマーを創出した。

 同技術は、臓器や生体組織の動きに追従できる柔軟性と耐破断性が求められる再生医療などの組織再建治療用途への展開が期待される。例えば、ポリマーを用いた医療材料は、損傷した柔軟組織を再生するための足場として一時的に補完し、役割を終えた後に分解するため、残留の懸念がなく、また必要に応じて繰り返し手術ができるというメリットがある。また、汎用性が高いと考えられることから、医療分野以外の各種分野への幅広い適用も期待できる。技術ポイントは以下のとおり。

1.生体吸収性機械特性の改質技術

 東レは早くから、生体吸収性ポリマーの機械特性向上に着目し、乳酸、グリコール酸、カプロン酸、エチレングリコールなどのユニットを組み合わせ、圧縮に対する柔軟性と復元性を有する生体吸収性ポリマーなどを創出してきた。このたび、これらの技術を更に深化させ、従来とは異なる特殊な共重合方法により、結晶性を大幅に低減し、柔軟性、耐破断性と復元性を併せ持つ生体吸収性ポリマーの開発に成功した。

2.加水分解性の制御技術

 ラクチドとカプロラクトンからなる共重合体は、疎水性が高いために水が接近しにくく、加水分解に時間を要する。東レは、エチレングリコールユニットの含有量制御により、上述の機械特性に影響を与えることなく、分解性を10倍向上させることを可能にした。

 同開発品を、直径3mmのポリエステル繊維製人工血管の外表面に被覆したところ、机上検討の結果、湾曲させても座屈せず人工血管の動きにしなやかに追従した。また、動物実験において、本開発品が分解するにつれて人工血管周囲から血管を構成する細胞が浸入し、人工血管を足場に血管組織が再生することによって、移植6ヶ月後も人工血管が開存することを実証した。

 この生体吸収性ポリマーは、血管の他にも、皮膚、消化器、泌尿器、筋肉などの柔軟組織・臓器を再生する再生医療足場材料として更なる開発を進める。