(株)東芝は、独自開発した触媒電極を用いて、工場などから排出される二酸化炭素(CO2)からプラスチック、塗料、医薬品といった化学品や燃料の原料となる一酸化炭素に変換する技術において、これまでの同社技術の約450倍にあたる世界最高レベルの変換速度を達成した。同技術により、CO2排出量を高効率で削減することが可能となり、パリ協定の目標達成に向けた社会課題解決に貢献する。同技術は、変換に必要なシステムの省スペース・低コストを合わせて実現し、同社は2020年代後半の実用化を目指す。

2019 03 15 toshiba1 なお、同社は同技術の詳細を、3月16日から19日に神戸で開催される「日本化学会 第99春季年会」にて発表する。

 CO2の大気中濃度の上昇が地球温暖化の一因と推測される中(注1)、近年では、SDGs(注2)やESG投資(注3)など、脱炭素に対する意識の高まりが産業界のみならず経済界にまで波及している。パリ協定において日本は、2050年までに80%の温室効果ガス排出量の削減を目指しているが、工場などの産業部門におけるCO2排出量の削減が進まず、大きな課題となっている。このような中、CO2を電気が関与する化学反応(電気化学反応)により有価物に変換して有効利用する技術の開発が進められている。

 CO2を有価物である資源に変換するためには、正極と負極を有し、電極表面で化学反応を起こす電気化学セルが用いられる。これまでの技術開発では、電源として電力系統に分散される多様な再生可能エネルギーを用いて、電気化学セルに電圧をかけ、水溶液に溶け込ませた微量のCO2を有価物に変換する方法がとられていた。しかし、水溶液に溶け込ませることができるCO2の量が少なく、変換反応が停滞し、電気化学反応の反応速度を示す電流密度(注4)が小さくなるという課題があった。より多くのCO2を高速で変換するために、電気化学セルを増やす方法がるが、設置の場所やコストに制約が生じるため、実用化には、電流密度を向上させ、省スペース・低コストを実現しつつ、変換量を増やすことが求められている。

 そこで同社は、電流密度を大幅に向上させるために、反応時にCO2を水溶液に溶かし込むことなく気体の状態のまま直接利用できる触媒電極の開発を進めた。今回、固体(触媒)、気体(CO2)、液体(水)の三相を同時に反応させる三相界面反応が可能な触媒電極を独自開発し、開発した触媒電極に、気体のままのCO2と水を同時に反応させることで、CO2の直接利用に成功し、変換反応の停滞や電流密度の低下を解消することができた。

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 さらに、この触媒層の構造として、ナノサイズの細孔に加え、CO2ガスの流路となるマクロ孔を導入した独自構造を採用することで、ガスの拡散抵抗が小さくなり、より多くのCO2ガスを触媒に供給することが可能。これらの結果、通常(常温常圧)の環境下において電流密度700mA/cm2という高速の変換速度でファラデー効率(注5)92%と、これまでの同社技術と比べ約450倍にあたる世界最高レベルの変換速度で一酸化炭素の生成に成功した。

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 同成果により、変換システムの設置面積の省スペース化が可能となり、合わせて低コスト化を実現する。将来的には火力発電所や産業施設などのCO2を多く排出する施設に近接してシステムを設置し、系統接続された太陽光や風力などの再生可能エネルギー発電施設からの電力を活用してCO2の削減を行うことが可能となる。

 同社は今後、環境省委託事業「人工光合成技術を活用したCO2の資源化モデル事業」で同技術のシステム実証および炭素循環社会のモデル構築を進め、2020年代後半の実用化を目指す。

(注1)IPCC第4次評価報告書総合報告書 環境省

(注2)2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標 Sustainable Development Goalsの略

(注3)環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)に配慮している企業を重視して行う投資手法

(注4)電流値を電極面積で割った値で、電気化学反応の反応速度を表す。

(注5)流れた電気量のうち、目的の電気化学反応にどれくらい利用されたかを表した割合。