コンバーテック2021年10月号プレサービス
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1グリーンイノベーション基金事業の「次世代型太陽電池の開発」についての公募が今月1日から始まりました。受付締切は11月15日正午までです。NEDOのHPの公募情報には、「既存の技術では太陽光発電を設置できなかった場所(耐荷重の小さい工場の屋根、ビル壁面等)にも導入を進めるため、次世代型太陽電池(ペロブスカイト)の開発に取り組みます」と、プラスチックフィルム基板上に、印刷(塗布も含みます)で製造できるペロブスカイト太陽電池を主役に据えています。予算規模は未確定ですが498億円です。 本誌では、2003年7月号で「プラスチックフィルム色素増感太陽電池の研究開発」(著者:桐蔭横浜大学大学院 村上拓郎・宮坂 力 氏)、2008年7月号で「プリンタブル加工技術で作るプラスチック色素増感太陽電池素子」(著者:桐蔭横浜大学 宮坂 力 氏)にご執筆いただいていましたが、それを考えると、このタイミングで、政治・行政が本腰を入れ出したのは時期としては適切だったのでしょうか。スポーツ報道のように、日本人アスリートの頑張りにスポットを当て、これでもかというくらい持ち上げ、国内世論・国民感情を喚起していますが、他の国のアスリートも同様の努力をしているはずですので(凌駕しているかもしれません)、試合本番でこんなはずではなかったと落胆するのはお門違いと思いますが、2030年、2050年の出口で、目標とする経済波及効果が得られるかどうか、大いに期待したいところです。 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会の会合資料で、ペロブスカイト太陽電池の製造法で必ず出てくるのが、東芝のメニスカス塗布法のイラストです。WG等の説明でも、日本の優位性を発揮できる塗布法というような説明を耳にしたことがありますので、日本の塗布技術もまだまだすたれたものではないなと嬉しくなってしまいます。単純ですね。2019年2月に開催された「第27回東芝グループ環境展」で、フィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールの実物を目にしました。2109年3月号の本誌記事では、「既存の塗布装置を試したが、上手く塗れなかったため、アプリケーターヘッドに塗液を供給し、基板とアプリケーターヘッド間で形成されるメニスカス(塗液の表面張力によって、液面が湾曲する現象)を利用した塗布印刷技術をペロブスカイト太陽電池用に改良」とレポートしています。基材はPENフィルムです。その時のエネルギー変換効率は、1cm2のセルで16%、703cm2のモジュールで11.7%。最大基材幅は350mmで、ライン速度は2.5m/min。目標は5m/minとも記されていました。 その後については、オンライン開催された第82回応用物理学会秋季学術講演会の、9月12日に、東芝の研究開発センターの志茂俊輔氏が、「大面積均一塗布が可能なメニスカス塗布の高速化と大面積フィルム型ペロブスカイトモジュールの高効率化」というテーマで、質疑応答を含め15分枠で発表を行いました。 塗布装置についての情報開示はありませんでしたが、従来法ではヨウ化鉛を塗布し、乾燥、その上に、ヨウ化メチルアンモニウムを塗布して、乾燥という、塗布と乾燥を2回ずつ行っていたのを、インク、塗布プロセス、装置を工夫し、塗布、乾燥とも1回で済ませるようにし、乾燥後の膜にピンホールはなく、厚み精度も±9%に抑えられているとのことでした。塗布速度は5cm2で6m/min。エネルギー変換効率は、703cm2のモジュールで15.1%。塗布幅は300mm程度のようですが、1000mmをターゲットにしているようでした。「水素」という言葉が飛びかっていますが、少々辟易としている方も数人はいらっしゃると思います。10月4日午後7時より、水素閣僚会議(H2EM 2021)がオンライン開催されました。各国の代表が、当日、経済産業大臣を退任した梶山弘志議員に感謝の言葉を述べていたのが、いかにも録画ビデオっぽかったのはご愛敬として、1つ、面白かったのは、ポーランドの気候・環境大臣のMichal Kurtyka氏(Dr)が、ポーランドの取り組みとして、水素機関車の開発を挙げていたことです。なんだか、水素がより身近に感じられますね。

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