コンバーテック2021年10月号プレサービス
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自動偏肉補正Tダイ「スマートフリッパ」3自動車メーカーの高い要求水準に適う車載用アルミパウチ型LIBの製造を日本の技術が支えていると言っても過言ではありません」 具体的には、正極および負極の電極材料や電解液、セパレータ、外装材フィルム、シーラント等の材料関係から、コータやラミネータなどの生産設備まで、すべて日本企業が供給しているケースがほとんどとのこと。 同社は、外装となるアルミ箔とナイロンのラミネートフィルムにシーラントのCPPを積層するための押出ラミネータを供給。「アルミ箔とCPPの間にPP系プライマー層を形成できたり、デラミのリスクを極小化する接着強度を確保するための乾燥炉を備えていたりといったノウハウが詰まっています。また、歩留まり向上や省エネ、自動化といった技術が強く求められていますが、自動偏肉補正Tダイ『スマートフリッパ』をはじめとする当社の最新技術により、こうしたニーズもカバーしています。そして、当社が選ばれている一番の理由は、実績です。それは他の日本企業も同様です」。 中国のLIB関連企業は、日本の技術の組み合わせによって安全性・信頼性に優れたLIBが実現し、実用に供されていることを重視しており、どこの企業がどのような役割を果たしているのかを綿密にリサーチした上で、同じ技術を揃えることを徹底しているという。「現時点で車載用として確実に使えるものを製造するには、こうしたアプローチが最善と判断しているのでしょう」。 黒河社長は「当社が得意とする押出成形技術は、大量生産によるコストダウンに寄与でき、かつ、異種材料を組み合わせて機能を向上させたり、製膜技術の工夫で歩留まりなどを大幅に改善できたりする可能性があります。民生用途のLIBに比べ、車載用途は求められる性能が非常に高い上、価格競争も熾烈です。このため、LIB開発に取り組まれるお客様は、製品構成から製造工程まで様々な工夫を取り入れており、こうした取り組みの推進に当社の技術が役に立っているのではないかと考えています」。 こんな動きもある。従来、中国企業は、パウチ型LIBの外装のアルミラミネートフィルムを日本から購入するのが一般的だったが、同社が押出ラミネータを納品した顧客からこれを内製化したいという相談があり、ナイロンフィルムを製膜するためのインフレ製膜 システムを供給した。このナイロンフィルムをアルミ箔とドライラミネータ (同社では扱っていない)で貼り合わせれば、アルミラミネートフィルムができる。また、LIBセルから電気を取り出すタブリードの絶縁体に用いるオレフィン系フィルムを製造するためのキャスト製膜装置を納品した例もある。「今後、材料の多様化・内製化の方向に進むかもしれませんが、当社では、そうした動きもビジネスチャンスにできる製品ラインアップをそろえているのは強みだと思います」。 中国企業との商談は基本リモートツールで行うが、難しさを感じる部分もあるという。「現地での設備の立ち上げや、ビジネス上のコミュニケーションは従来通りというわけにはいきませんね」。 例えば、設備の立ち上げでは、装置の据え付けや配線工事などは現地の協力会社に一任し、実際に動かして所望のものがつくれるかを確認する段階は同社スタッフが出張する体制を取っているとのこと。 また、リモート会議では「モニターの向こうのお客様が何を考えているのかがつかみにくく、苦慮する場合もあります。特に、新規案件の交渉では、双方の意見の落しどころを探るといった繊細なやり取りは限界があるというのが実感です。逆に、相手側も複雑な意思の疎通は難しいと最初から理解していて、こちらの説明が完全に終わっていない段階で『もうだいたい分かりました』と結論にたどり着いてしまう場合もあります(笑)。いずれにせよ、対面でのコミュニケーションの重要性を改めて認識しました」。 黒河社長は、本社第一工場内に設置されている、顧客の製品開発や量産に向けたテストを実施するテクニカルセンター(MTEC)をどう活用していくかが、今後の成長を左右すると考えている。MTECは、多層インフレフィルム製造システムおよびラミネータ・キャスト・シート兼用テスト装置を主要設備とし、2017年のリニューアル終了後も改良を継続しており、従来は最大3層までの対応だったインフレ製膜の ■外装のナイロンや タブリードの絶縁材も ■リモートでのやりとりは難しい ■LCP製膜や車体保護フィルムなどで実績

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