コンバーテック2021年10月号プレサービス
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1.はじめに 世界規模で環境負荷低減への関心が高まっている中、パッケージ業界においては軽量・省資源・省エネルギー・衛生保存などを実現する軟包装を採用する動きが拡大している。印刷市場全体を見渡すと、多品種小ロットのニーズが拡大し、特にトランザクション・DM・大判広告・商業印刷などの分野においてデジタル化が進んでいるが、今後はパッケージ分野のデジタル化が進むと予測されている。その中でも、軟包装印刷のデジタル化は、薄フィルム搬送・乾燥やインク安全性、後加工適性などの技術的ハードルが高いものの、市場からの期待は非常に高い。 軟包装向けデジタル印刷機のいくつかは既に市場投入されているが、「プロモーションプリント」(サンプル、モックアップ)対応に限定されており、生産性に課題があった。現在の世界の軟包装市場では、4000 m以下の小ロットJobの「プロダクションプリント」ができる生産機としてのデジタル機が要望されており、我々はプロダクション用途に対応した高速で高品質な水性シングルパスインクジェット(IJ)印刷機「Truepress PAC 830F」(図1)を開発している。主要スペックを表1に示す。 本稿では、裏刷りの軟包装フィルム印問い合わせ㈱SCREENグラフィックソリューションズ事業統轄部 営業推進部info-ga@screen.co.jp刷物を対象に、印刷品質向上に向けて開発した各種要素技術について説明する。2.ハードウェア技術2.1 搬送技術 ロールtoロール搬送においては、一般的にスリップ、トラフ、張力変動などの課題があり、印刷品質劣化(色間見当ズレ、濃度/色ムラ)や基材巻取不良を招く恐れがある。 スリップは、基材とローラの間に空気が入ることで起こる現象であり、溝付きのローラを採用することにより基材・ローラ間の空気を抜き、スリップを防止している。トラフに対してはコンケーブローラ(逆クラウンの太鼓ローラ。さら2.2 乾燥技術 軟包装用フィルム基材上の水性インクを乾燥させる上での最大の課題として、ヒートセンシティブなフィルム基材にダにスリップ低減のためにローラ表面は溝付きである)によるシワ伸ばしを実現している(図2)。 張力変動については、各部搬送ローラの偏心やアライメントズレをメカ的に抑えるとともに、張力制御の最適化にも取り組んでいる。ローラ、モーター、張力フィードバック制御系を含めた当社独自の搬送系解析モデルを構築し、シミュレーションに基づく高精度の張力制御を実現している。最大基材幅最大印字幅インク印刷速度インク吐出方式解像度対応基材乾燥方式図1 Truepress PAC 830F表1 Truepress PAC 830Fの主要スペック830 mm800 mm水性CMYK+W、食品安全規制に準拠75 m/分(4500 m/時)ドロップオンデマンド方式1200×1200 dpiPET,OPP(ニーズに応じて拡充予定)温風乾燥33

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