コンバーテック2021年10月号プレサービス
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2.3 インクジェット技術 「プロダクションプリント」ができるIJ印刷機として、高品質な印刷のみならず幅広印刷・連続印刷安定性を実現する必要がある。水性インクを使う場合、非印字の状態が長期間続くとノズルが乾き、メージ(基材収縮や擦れ)を与えることなくインク中の水分などの揮発成分を効率よく乾燥させることが挙げられる。IRヒーターによる直接照射乾燥では、インク温度が急激に上がりやすくインクの色による感度差があるため、運用が難しい上に画像歪みを生じやすい。Truepress PAC 830Fでは温風乾燥を採用しているが、温風の給排気ユニットのレイアウトをシミュレーションにより最適設計し、乾燥炉内の湿った空気の置換を適切に行うことで乾燥効率向上を図っている。図3 クラスタースクリーン3.ソフトウェア技術3.1 網点技術 従来のグラビア/フレキソ印刷では、150~175線前後のAMスクリーンを使用して画像の階調表現がされており、画像細部の再現性には課題があった。IJでは3.2 濃度均一化技術 致命的な白スジに関しては、あらかじめその発生箇所を特定し、その両隣の画素値をオフセットしてスジを目立たなくする手法を開発している(図5,6)。ノズル並び方向の濃度ムラに対して、紙用のIJ印刷機では従来、品質管理用のインラインスキャナと反射光を用いて濃度補正が行われているが、裏刷り印刷物の画像取得においては、撮像素子と反射板の間にフィルムを介することに起因してゴーストが発生し、正しく画像を得られない問題があった。そこで、まずノズル並び方向の濃度ムラの検出機構として反射光に加えて透過光を併用し(図7)、フィルム面側から撮影してもゴーストの無い画像が得られるようにした。その画像を用いてノズル並び方向の濃度プロファイルを取得し、入力画像にフィードバックすることで濃度均一化を実現している(図8,9)。一般的に高精細なFMスクリーンが用いられるが、ノズルのわずかな着弾誤差や液滴量の変化が濃度ムラになる課題がある。また、極端な横飛やノズル欠けにより致命的な白スジが発生することもある。 網点に関して、FMスクリーンをベースにより外乱に強いクラスタを形成するスクリーン1)が必要と考えた。今回、任意の粗さのクラスタースクリーンを発生する方法を開発し(図3)、その中から網点形状の最適化を図っている(図4)。図2 溝付きコンケーブローラ吐出不良を招く恐れがある。それを防ぐため、ノズル近傍のインクを循環させるタイプのIJヘッドを採用し、ヘッドを並べることで幅広印刷を可能とするプリントバーの開発を行っている。また、吐出性能向上に向けてヘッド駆動波形の最適化にも自社で取り組んでいる。波形開発効率化のために印刷機実機と同じ吐出環境を飛翔観察治具として開発しており、実機上での吐出挙動を治具上で評価しながら最適な駆動波形を生成し、良好なドット生成を実現している。FM Screen図4 スジムラ耐性のシミュレーションClustered ScreenFMScreen FineCoarse10152025303540455010~50:positioning error(μm)10152025303540455033

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