コンバーテック2021年10月号プレサービス
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77のは上下層が同一粘度・流量」の条件から「下層の粘度と流量を変化させた際の速度プロファイル」となります。粘度と流量の影響は以下の(A)~(C)になります。(A)粘度:下層は低粘の方が高粘よりも安定(上下層界面の速度プロファイルの不連続な変化は不安定)。(B)流量:影響小。界面の位置が変わるだけ。粘度バランスを調整するために液濃度を変更すると、流量も変わりますが「流量比率が偏っても大勢には影響しない」というのが筆者の個人的見解です。(C)超高粘:下層が超高粘の場合、下層自体を支持体と同じように扱うことができるので、結果的に安定になる場合もあります。ただし、下リップ下端に液がピンできる条件は別に最適化する必要があります。⑥同時重層スロット塗布のまとめ ここまで読んでいただいた内容で、基本的には、塗布条件を確立できるはずです。しかし、非ニュートン粘性や各層の溶媒の組み合わせ等が特殊な場合は、個々の複雑な最適化が必要になります。そのような場合は、初めから同時重層塗布せずに、逐次塗布で確実に条件を確立した後、生産性の上での必要に迫られてから同時重層に取り組む方が、結果的に早く開発課題を達成できるケースが多いように考えます。<参考文献>1) K-Y, Lee, L-D, Liu, T-J,Liu, Mionimum wet thickness on extrusion slot coating, Chemical Engineering Science, PROFILE1968年、北海道札幌市生まれ。北海道大学工学部修士課程卒業後、1992年から大手化学メーカーに勤務し、コーティングを中心にコンバーティング技術の研鑽を積む。2013年に退職し、同年から韓国の世界的電機メーカーの中央研究所に勤務。2019年2月に同国の栗村化学に移籍し、工程開発チーム長を務めた後、2021年4月にアメリカの* andante1230@gmail.comZymergen社の日本拠点に移籍。 vol.47, No.7(1992), p.1703-17132) 古賀裕久, 特許から探るコンバーティング技術, コンバーテック,Vol.49, No.6(2021), p.154図7 下層の粘度と流量を変化させた際の速度プロファイル下層を低流量下層を低流量下層を超高粘下層を高流量下層を高流量不連続な変化は不安定下層高粘よりは安定(上下同粘度よりは不安定)下層が支持体同様になるので上層の単層塗布に近くなる上下層が同粘度で同流量結果的に安定する場合あり最も安定韓国コンバーティング放浪記まとめまとめ スロットダイの塗布適性および、重層塗布の考え方を要約すると、・遅く塗れば大抵は塗布可能・重層塗布は単層に近い条件を探す の2点に尽きると考えます。あくまでも、筆者の経験に基づくものであり、疑問や別のご意見などがあれば、ぜひ、メールなどでご連絡いただければ幸いです。下層を高粘下層を低粘

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