コンバーテック2021年10月号プレサービス
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88はこのように<PEラミ加工とシリコーン加工>が行われます。 一方、ガムテープではPEもシリコーンも使いませんので<省資源>、かつPEラミ加工、シリコーン加工も行わないので<省エネ>にもなります。プラスチック使用削減、再生紙化も可能で、かつ生産コスト的にも有利です。原紙は、クラフトテープでは梱包した段ボール箱を落とした時に、その衝撃でテープが切れないようタテ(流れ)方向の伸びが大きい、細かいシワ付け加工をした<クルパック処理クラフト紙>が必須ですが、ガムテープでは段ボールにしっかり接着(固着)するのでクルパック処理なしの<普通の安価なクラフト紙(プレーン・クラフト)>が使えます。古紙を水中で撹拌・繊維状にすることを「離解」といいますが、クラフトテープ用のクルパック処理クラフト紙とガムテープ用のプレーン・クラフトの離解性を比べると、後者の方が良好、離解し易いわけです。この点でもガムテープは有利です。 さらに、クラフトテープでは、背中側にシリコーンがあるためテープの重ね貼りができません。印刷、印字、マーカー筆記もできません。これに対しガムテープは重ね貼りができ、印刷・印字・マーカー筆記も可能です。クラフトテープ背面のシリコーンは滑り易いので、梱包した段ボール箱を重ね積みした場合、運搬・輸送時に荷崩れが起きたりします。ガムテープの背面は滑り難いので荷崩れが起き難くなります。 次に[接着剤]ですが、クラフトテープではSIS, SBS, SEBSなどの熱可塑性合成ゴム系あるいは天然ゴム系の感圧接着剤(粘着剤)が多く使用されますが、これらはいずれも古紙回収された段ボール、紙を再生紙にする際に残存して問題となり、“禁忌品”として嫌われています。一方、ガムテープでは水溶性の<再湿接着剤>ですので、離解性が良く、再生紙の原料が容易に得られます。ガムテープの接着剤としては、昔はアラビアゴム(Gum arabic)注1)やニカワ(Animal glue、膠)注2)が使われていましたが、今はデンプン系(Starch-based type)が主流です。ちなみに<デンプン>は製紙工場で古くからコート剤として、よく使われている馴なじ染み深い材料でもあります。 なお、クラフトテープの天然ゴム系粘着剤では塗工時に<有機溶剤>を使用しますが、ガムテープでは<水系接着剤>ですので環境負荷も少なく有利です。さらに糊の塗工厚も粘着剤に比べずっと薄いのでコスト的に安くなります。 以上見てきましたが、ガムテープは<Eco-friendlyで安価>な点で優れていることがお分かりいただけたと思います。しかし、クラフトテープに比べ、劣る点がない訳ではありません。①水でぬらさなければならないという手間がかかること、②(段ボールや紙には強く接着しますが)紙以外のプラスチックには接着しにくいということです。①は、必要な長さにカットされ糊面が水でぬらされたテープがさっと!自動的に出てくる<オート・ディスペンサー>が既に多く市販されていますので、これを利用すれば作業者は(水でぬらさなければならないという手間は省け)、何ら問題もなくただ貼るだけでOKとなります。さらに <段ボール箱のガムテープ用自動封緘機>もかなり以前から開発・使用されていますので、これをラインに組み込めば省力化、生産性向上にもつながります。②は、ガムテープが過去に大きく成長した主因が、段ボール箱の普及・使用量拡大だったことを考慮すれば、用途を段ボール箱封緘に絞ってもかなりの需要回復が期待できるように思われます。プラスチックに接着しにくいという点は、段ボール箱封緘では問題になりません(プラスチック被着体にはPP粘着テープなどプラスチックのテープで対処した方が賢明です)。ガムテープには布粘着テープに対抗すべく<重包装用の糸入りガムテープ>(クラフト紙/糸/クラフト紙/再湿接着剤)があり、かなり以前から販売されています。 そうそうもう1つガムテープでは、耐水性が不足しているのでは?という見解もありますが、段ボール箱梱包では使用上問題となるレベルではありません。ガムテープは、封筒に貼った切手を水にしばらく浸けて置くと剥がせるように、水により剥がせるようになる性質を持っています。この水により喚起される剥離性(易解体性)こそ、実は再生紙製造におけるリパルパブル化を可能にしているのです。見方を変えれば、ガムテープは<接着性と剥離性>を内在させているテープなのです。水によりベタベタ粘着性を発揮し、水が乾けば固着し、剥がそうとすれば水により剥離性を発揮します(水が重要な役割を果たしているんです。面白いですね!)。 「ガムテープが欧米で伸びている!」地球温暖化対策、プラスチック廃棄物削減の追い風にのって、今ガムテープが欧米で好調な伸びを示しています。安価で環境に優しいことが伸びている最大の理由と云われています。<Amazonや売上額世界最大のWalmartでも本格採用>されたとのこと。ちなみに老生、結構Amazonでショッピングしていますが、いつも送られてくる段ボール箱はほとんどガムテープで封緘されています。 ガムテープの歴史を見てみると、早くからヨーロッパで工業化されましたが、大きく工業化が発展したのは1910年

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