コンバーテック2021年12月号プレサービス
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OCOCOCHOxHOxHOyOxHxOyOCOCOCPHAの種類scl-PHAmcl-PHA scl/mcl- PHA炭素数C3〜C5C6〜C14C3〜C14CH3CCH2P(3HB)CH3CH2CCH3CCH2P(3HB-■■-3HV)CH2m=3-7(CH2)mHCH3CH2COCH2P(3HA)CH3(CH2)mm=3-7HCH3CCH2CCH2CH2P(3HB-■■-mcl-3HA)化学構造PHA合成菌の例■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■FA440■■■■■■■■■■■■sp. 61-34.海藻を原料として利用できるPHA合成菌の発見94コンバーテック 2021. 12する。しかし、sclモノマーと炭素数6〜14の中鎖長モノマーが共重合化したscl/medium-chain-length(mcl)-PHA共重合体においては、mclモノマーのモノマー分率が向上すると、柔軟性が付与される。これは、mclモノマーが高分子鎖の結晶成長を妨げ、アモルファス領域を増大させるためである。炭素数4の3-ヒドロキシブタン酸(3HB)と炭素数6の3-ヒドロキシヘキサン酸(3HHx)との共重合体であるP(3HB-■■-3HHx)は、3HHxユニットの組成比により硬質から軟質まで幅広い物性を示す。P(3HB-■■-3HHx)は、国内の化学メーカーである㈱カネカから生分解性ポリマー「Green Planet」の商標で販売されている。 さらに、PHAには合成プロセスにおいても特徴がある。上述したように、PHAは微生物が合成することから、PHA合成菌が生育に利用できるバイオマス由来の糖や油を原料とできる。よって、バイオマスを原料として合成されるPHAはバイオプラスチックに分類され、持続的な図2  PHAの種類とPHA合成菌の例。P(3HB):Poly(3-hydroxybutyrate),P(3HB-■■-3HV):Poly(3-hydroxybutyrate-■■-3-hydroxyvalerate),P(3HA):Poly(3-hydroxyalkanoate),P(3HB-■■-mcl-3HA):Poly(3-hydroxybutyrate-■■-mcl-3-hydroxyalkanoate)供給が可能な生物資源を原料にできる点が強みである。加えて、PHAの合成プロセスは他のバイオプラスチックの合成プロセスとは異なることから、さらなる強みがあると我々は考えている。例えば、現在最も市場で活躍しているバイオプラスチックのポリ乳酸(PLA)の合成プロセスでは、第1段階として植物由来の糖を原料とし、微生物の発酵法により乳酸を合成する(図3)。その後、得られた乳酸をラクチドへと変換し、ラクチドを開環重合することによってPLAが合成される6)。つまり、PLA合成プロセスでは、微生物によってモノマーである乳酸を供給し、モノマー重合は化学合成によって行われている。それに対して、PHAの合成プロセスは、植物由来の糖や油を原料とし、モノマーの供給から重合まで、すべての合成プロセスが微生物細胞内で進む「オールバイオプロセス」である。よって、一般的なバイオプラスチックの合成法と比較すると、合成に関わるステップ数の削減に加え、化学合成で必要な高温高圧の反応条件、有機溶媒、および重金属触媒の使用が不要であるため、他のバイオプラスチック合成よりも環境低負荷な合成プロセスを確立できる可能性があると我々は期待している。 これらのPHAの稀有な性質とユニークな合成プロセスに着目し、我々は海藻を原料としたPHA(海藻プラと呼んでいる)の微生物合成を目指そうと思い立った。 では、掲げた技術目標をどのように実現させるのか。これまで植物由来の糖や油などを原料として細胞内にPHAを効率よく合成できる微生物は、既に数百種類報告されていたが、海藻成分を利用可能なPHA合成菌の報告はほとんどなかった。そこで、我々は、自然界から海藻成分を利用できるPHA合成菌の探索を行った。海藻成分を生育のために利用できる微生物は、きっと海洋環境に存在

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