コンバーテック2021年12月号プレサービス
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mOO(m:0−5)H2O,CO2n糖OOOnnポリ乳酸(PLA)■ 一般的なバイオプラスチックの合成法:3ステップ生産■ PHAの合成法:2ステップ生産 図5 海藻プラを活用した資源循環のイメージ行ってきた。これらに加え、新たに持続可能な地球環境を目指した2050年環境ビジョンを策定し、ライフサイクルCO2排出量ゼロや廃棄物ミニマム化など6つの環境チャレンジ目標を掲げて生産活動を行っている12)。今後、バイオ材料の積極的な活用を推進していく中で、海藻プラは新たなバイオ材料の1つとして期待できる。 バイオマス由来のプラスチックはそのほとんどが陸地植物を原料としている。しかし、その急速な需要拡大が、食糧との競合や原料枯渇を招くことで、バイオ微生物材料の供給量を制限する懸念がある。こ発酵れまで原料として目を向けられなかった海藻を活用する海藻プラは、材料供給の側面から製造業におけるバイオ材料採用の選択肢を広げることになるだろう。トヨタ紡織ではあえて自動車部品に限定せず、部品製造工程の中で輸送や梱包に使用される様々なプラスチックの代替使用も視野に入れ、生分解性を活かした海藻プラの実用化を目指している。一方で、海藻プラはまだ生産量が少なく、物性の面でも改善の余地がある。当社では、これまでに培った植物材料を活用した製品化の経験を活かし、海藻プラの活用や海藻利活用のサイクル活性化に貢献することで、廃棄海藻などの社会問題を解決するとともに、持続可能な社会の実現に貢献したいと考えている(図5)。PHAワカメ・コンブ光合成例)ポリ乳酸CO2 + H2O植物光合成バイオプロセス植物光合成CO2 + H2O生分解糖、植物油0.2μm微生物体内プラスチック製品化学合成ケミカルプロセス(m:0−5)mOPHA◆特別寄稿:次世代自動車の動向と期待される高分子材料 ●第1編:機能性樹脂 ●第2編:機能性フィルム ●第3編:フィルム・シート ●第4編:機能紙・不織布・金属箔 ●第5編:機能性添加剤 ●第6編:インキ/粘接着剤/コーティング剤96コンバーテック 2021. 126.今後の課題 前述してきたように、我々は、海藻プラ合成に適したプラットフォーム菌を見出すことに成功したが、現状、発見した微生物の性質を調査し、可能性を提示できただけの状況である。実用化を考慮すると、海藻プラ合成に関わるコストの削減と海藻プラ材料特性の改善が、現状克服すべき目前の課題である。今後は、これらの課題を解決するために、遺伝子組換えによる菌の改良と培養法の検討に向けた技術基盤を構築していく必要がある。さらに、仮に前述した技術的な課題をクリアできたとしても、海藻プラを乳酸様々な用途で使用してもらうためには、廃棄される海藻の原料調達から製造、加工、製品化、販売と、産官学の連携のもとに海藻プラに適した新たな製造・流通のルートを開拓していく必要があると微生物我々は考えている。将来のことを考える発酵と、まだまだ課題が山積みで気が遠くなるが、一方で、まだ誰も実現できていないことにチャレンジしているという高揚感や楽しさもある。海藻からバイオプラスチックが合成されることが当たり前の技術となった未来の社会を思い描きつつ、今後も1つひとつの課題に対し、地道に取り組んでいくつもりである。<参考文献>1) 藤井ら:環境科学会誌,Vol.13,586-593(2000)2) 土肥義治:ILLUME,Vol.26,4(2001)3) 海洋生分解性プラスチック技術編集委員会:最新の海洋生分解性プラスチックの研究開発動向,㈱テクノシステム(2021)4) 山田美和、松本謙一郎、田口精一:日本油化学会誌,No.5,523-532(2005)5) 山田美和、松本謙一郎、田口精一:繊維学会誌,No.64,365-370(2008)6) 山田美和、田口精一:BIOINDUSTRY,No.26,54-62(2009)7) 山田美和:月刊プラスチックス,Vol.70,15-19(2019)8) M. Yamada et al., Fisheries Science, Vol. 84: 405-412(2018)9) 特願2019-142249(岩手大単願の特許)10) H. Moriya et al., Frontiers in Bioengineering and Biotechnology, Vol. 8: 974-984(2020)11) 特願2019-218487(岩大・トヨタ紡織の共願)12) トヨタ紡織㈱ホームページ「2050年環境ビジョン」https://www.toyota-boshoku.com/jp/sustainability/environment/plan/海藻からPHA詳細、購入はWEB サイトにて!  www.ctiweb.co.jp/store/商品開発に欠かせないフィルム・シート、機能性材料2018体裁:A4判532頁発刊:2018年2月9日定価: 18,700円(本体17,000円+税10%)、送料別

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