コンバーテック2021年12月号プレサービス
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筆者プロフィール 東京大学大学院情報理工学系研究科後期博士課程修了後、㈱三菱総合研究所、デロイト トーマツ コンサルティング(同)を経て、現職に至る。「知的財産の活用・マネジメントの戦略参謀」として、クライアントの事業を支える優れた技術、デザイン、アイデア等の知財を生かして売上向上を実現するための戦略立案と実行支援に日々奮闘している。特許庁主催「知財を切り口とした事業性評価の方法について」などのフォーラムの基調講演のほか、各種セミナーでの講演、業界ジャーナルへの寄稿実績多数。いう空間で行われている。 しかし残念ながら、この研究開発の仕組みそのものが、企業活動の中でも研究開発活動をとりわけDXが遅れた分野にしてしまっている。これは、研究所という物理的空間を共有しながら、リサーチャーやエンジニアが人力でタッグを組んで成果を出すことを前提とした制度や、多額の設備投資を伴うインフラの上にアナログなワークフローが成り立っていることに依るところが大きい。 ところが、そんな研究開発領域のDXも、コロナ禍によってほぼ強制的に取り組まねばならない状況が訪れたといえよう。なぜなら、研究開発部門こそが将来の新価値を生み出す土壌となる組織であり、最先端の技術を駆使してビジネスを支える製品・サービスを開発する源泉だからである。10年後、20年後もなお自社が生き残り、社会において新価値を創造する存在であり続けるには、仮に従来のインフラの刷新を余儀なくされるとしても、積極的にデジタル技術を取り入れ、研究開発をダイナミックにDXしていく決意をする時が来たと受け止めるべきである。㈱テックコンシリエ ホームページ■■https://tech-consiglie.com/102コンバーテック 2021. 121.はじめに 今回は、前回(11月号)で取り上げた「イノベーションによるビジネス創造領域」に引き続き、レガシーシステムが社内に残存しがちな2つ目の領域として「研究開発領域」のDXについて取り上げ、DXを力強く推進し続けるための要諦について解説したい。 ビジネス創造領域は、ビジネスの種となる事業環境情報をグローバルに瞬時にかき集めて分析し、自社の勝ち筋となるビジネスを構築するという点で、コロナ禍での業務環境とも相性が良く、DXにチャレンジしやすい領域だった。その比較では、今回DXに着手いただきたい領域として挙げる「研究開発」は、なかなかに厄介な領域だと言わざるを得ない。ご存じの通り、企業による「研究」は、新製品や新たな製造方法を開発するための調査を行い、基礎学問の研究や目的に応じた応用研究の模索、将来的に発展する技術等の試験を行う活動である。一方、「開発」は、製品や製造方法のプロトタイプを実際に作り出すことで、設計・試作・既存製品と開発製品の組み合わせを行う。多くの場合、これらの活動はまとめて研究開発部門が担い、「研究所」と㈱テックコンシリエ 代表取締役 鈴木 健二郎PMI認定プロジェクトマネジメントプロフェッショナル博士(工学)第5回 領域別DXの進め方〜研究開発領域のDX〜新時代のコンバーティング業界におけるビジネス変革DXがもたらしうる

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