コンバーテック2021年12月号プレサービス
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 ロール・トゥ・ロールのプロセス加工において、搬送、巻出、スリット/巻取等に関連する「ウェブハンドリング」技術は、今日、太陽光発電パネル、フレキシブルディスプレイ、二次電池をはじめとする花形産業の根幹を支える技術となっています。また、近未来に爆発的な市場形成が期待されるプリンタブル・エレクトロニクスでは、量産化の重要なカギとされています。 反面、ウェブハンドリング技術は、プラスチックフィルム、金属箔、鋼板、炭素繊維複合材、繊維、不織布、合成紙、紙・板紙などのウェブをベースに生み出されるコンバーティング製品の良否を最終決定する重要技術でありながら、コーティング、ラミネーティング、プリンティング、乾燥・硬化などに比べ、未だなお理論解明の途上にあるため、一部の関係者を除き、その要素技術、理論的アプローチへの理解度が低いという課題が指摘されています。これが日本の産業力衰退にもつながっています。 こうした中、小社では、2008年4月、ウェブハンドリングの研究分野で世界的な第一人者とされる東海大学の橋本 巨教授にお願いし、世界で初めてのウェブハンドリングに関する専門書『ウェブハンドリングの基礎理論と応用』を刊行しました。これにより、ウェブハンドリング工程中で生じるシワやスリップなどのウェブ欠陥に対する勘と経験に基づく対処から、発生メカニズムを理解し、より理論的にアプローチすることが可能となり、生産性の向上、歩留まり改善、革新的生産システム構築への道が拓けたとの高い評価を得ています。 一方で、初心者が理解するにはハードルが高すぎるとの指摘がありました。また、橋本教授からは、「日本の産業力を強化するには、ウェブハンドリングを理解する人々の裾野を拡げる必要がる。そうした方を対象とした書籍が必要では」とのアドバイスもあり、今回、ウェブの力学的性質、ウェブハンドリングのトライボロジーという基礎編、さらには、ウェブの巻取問題、張力制御、ローラによるウェブの分離・拡張メカニズムという実践応用編の2部から成る「入門 ウェブハンドリング」を刊行しました。第1章 ウェブハンドリングとは 1.1 はじめに 1.2 ウェブとウェブハンドリング 1.3 ウェブハンドリングの技術上のポイント 1.4 ウェブハンドリング研究の流れ 参考文献第2章 ウェブハンドリングの過去・現在・未来 2.1 はじめに 2.2 古代の紙造りから抄紙機へ 2.3 毛筆による書写から印刷機械へ 2.4 ウェブハンドリング技術の将来 参考文献第3章 ウェブの力学的性質 3.1 はじめに 3.2 ウェブに作用する力と変形 3.3 フックの法則 3.4 ウェブ素材の構造と弾性の関係 3.5 液体の構造と粘性 3.6 粘弾性体とその力学モデル 3.7 ウェブの曲げ 3.8 ウェブの座屈 3.9 ウェブの折れしわ 参考文献 <ウェブの曲げに関する演習問題> 例題1  〜 例題10受賞2010年10月28日 第1版第1刷2018年 9月 8日 第1版(改訂版)第1刷B5判 本文262頁4,400円(本体価格4,000円+税10%)、送料別橋本 巨 東海大学教授株式会社加工技術研究会発行体裁定価著者発 行 所第4章 ウェブハンドリングのトライボロジー 4.1 はじめに 4.2 ウェブ搬送とトライボロジー 4.3 摩擦力と摩擦係数 4.4 アモントン-クーロンの摩擦法則 4.5 摩擦係数の測定 4.6 オイラーのベルト公式 4.7 固体の表面粗さ    (1)接触式粗さ計による方法    (2)走査型電子顕微鏡による方法    (3)共焦点レーザ顕微鏡による方法    (4)走査型トンネル顕微鏡による方法    (5)原子間力顕微鏡による方法 4.8 固体の接触と摩擦 4.9 摩擦のメカニズム 4.10 摩擦係数のコントロール 4.11 ウェブとローラ間への空気巻き込み 4.12 流体の粘性法則 4.13 流体潤滑の原理 4.14 レイノルズ方程式 4.15 フォイル軸受理論 4.16 ストライベック曲線 4.17 混合潤滑のモデルと有効摩擦係数 4.18 マクロスリップの発生条件 4.19 マクロスリップの抑止方法 4.20 ウェブの安全搬送線図第5章 ウェブの巻取問題 5.1 はじめに 5.2 ウェブの巻取方式 5.3 ロール内部の応力状態と巻取品質 5.4 巻取に関する古典的理論モデル 5.5 巻取ロール内部のヤング率の異方性 5.6 Hakielの巻取理論 5.7 数値解法 5.8 Hakielモデルに基づく計算例 5.9 空気巻込を考慮したウェブ巻取理論  5.9.1 ニップロールを使用しない場合  5.9.2 ニップロールを使用する場合 5.10 修正Hakielモデルの実験的検証  5.10.1 試験ウェブの物性値  5.10.2 巻取ロール内部の半径方向応力  5.10.3 巻取試験と内部応力の測定結果 5.11 テーパテンションの利用 5.12 巻取張力の最適化理論 5.13 粘弾性巻取理論 5.14 巻取後の温度変化を考慮した理論第6章 ウェブの張力制御 6.1 はじめに 6.2 ウェブ搬送システムと張力制御 6.3 張力制御のための力学系のモデリング 6.4 ウェブの張力制御系 6.5 巻取張力の制御第7章 ローラによるウェブの分離・拡張メカニズム 7.1 はじめに 7.2 ウェブの分離・拡張原理 7.3 ウェブ分離量の理論予測モデル 7.4 実験的検証  7.4.1 スリットされたウェブの分離量の測定  7.4.2 折れしわ防止機能の検証実験目 次日本設計工学会平成26年度 武藤栄次賞Valuable Publishing賞ご購入は右記WEBサイトにて! www.ctiweb.co.jp/store/書籍案内入門ウェブハンドリング

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