コンバーテック2021年12月号プレサービス
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RTRプロセスシートプロセス図8  RTR化によるコストダウン効果。 効果が期待できるのはほんの一部図9  RTR大型リールを使ったスクリーン印刷 装置(マイクロ・テック㈱)050間接共通費材料費後工程費前工程費100の一部だけであり、3層以上の回路、リジッド・フレックス、付加構造などについては、ほとんど適用できていないのが実情である。ただし、前工程において、回路構成が片面もしくは単純な両面の場合には、分離した工程で使われている。⑤設備投資が大きくなる RTR生産に使われる製造装置は、単板カットシート用の製造装置に比べて、搬送装置や精密位置合わせ装置などを装備しなければならないので、コストが高くなりがちである。また、RTR生産用設備は、標準的な設計があるわけではなく、用途に応じたカスタム設計になる。その目的ごとに、RTR生産によるコストダウン効果と、RTR化のためのコストアップを比較して、コストダウン効果が十分見込めないようであれば、RTR化以外の手立ても考慮すべきである。ただ、境界領域においては、明確な差が出ないことも多い。特に、量産の期間を長めに仮定すると、RTR生産に有利な計算になりがちである。4.RTRの経済効果 とにかく量産を立ち上げたいので、十分な事前検討をしないままで、RTRラインを建設してしまい、実際に稼働する段になって、期待したほどの採算が得られないということはよくあることである。RTRシステムを導入するに際しては、十分なシミュレーションを行って、そのコストダウン効果を評価してみるべきである。机上検討をいくらしても大した費用が生じることはないが、ひとたび設備を発注してしまえば、場合によっては1億円を超える金額が支払われるのだから、決断には慎重を期したいところである。 ここで、モデル的なケースで、簡単なコスト比較をしてみたい。図8に示したように、単純な片面構成のフレキシブル基板のコスト構成を考えた場合、材料費が全体の4分の1で、カットシート状での加工費は半分程度を占める。間接共通費の負担も5分の1にしているが、大企業であれば、当たらずとも遠からず、である。材料費は材料メーカーとの交渉で決まるもので、RTR化は下がる要因にならない。つまり、RTR化によってコストダウンを期待できるのは、せいぜい前工程費の50%ということになる。 そもそも、RTR化が可能な工程といえば、印刷、フォトリソグラフィ、エッチングなどの一部の前工程に限られ、打ち抜きや補強板貼り付けなどの後工程は、自動化どころか人海戦術でこなしているのが実情である。つまり、実際の工程でRTR化する意味がありそうなのは、全コストの15〜20%ということになる。しかし、工程をRTR化したからといって、一気に加工費が半分になるわけではない。仮に加工費が半分になるとしても、全体から見れば、5〜10%のコストダウンにしかならない。それぐらいならば、材料メーカーに交渉して、購入する原材料の値段を下げてもらう方が、よほど効率が良いように思える。 しかしながら、RTR化によるコストダウンを一度設定できれば、後は黙っていても低コスト処理が継続されるので、手をかけてシステム化するだけの意味がある。5.リール・ツー・リールとの違い 最初から混ぜ返すような話で恐縮であるが、ロール・ツー・ロールと似たような用語で、リール・ツー・リールという言葉がある。いずれも、アルファベットで省略すればRTRとなる。業界で明確な定義を出しているわけではないが、一般的には、巻き芯に何も付けず、筒状のコアになっているのがロールで、巻芯(コア)の両側に鍔を付けて、材料が偏るのを押さえているのがリールである(図9)。 通常のフレキシブル基板の場合、材料ロールの幅は、原反の整数分の1になるので、250〜610mmになる。一方、114コンバーテック 2021. 12

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