コンバーテック2025年4月号_見本
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γsg−γs□−γ□g cosθy=0γs□, γsg, γ□gが働く。接触角θyは3つの界面張力の引っ張り合いで決定され、以下の式(Youngの式)で求められる2)。θ□γ□□γ□□γ□□CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH 四図1  基板上の液滴の形状。濡れ角は3つの表面張力で決定される問い合わせ kurita@tmu.ac.jp1.はじめに2.塗り広げの物理コンバーテック 2025. 478 半導体や車、飛行機など様々な分野において、基板に塗料を塗り広げ、薄膜を形成することが行われている。このとき、気泡が含まれてしまうと、この気泡を取り除くことが難しく、本来の性能が発揮できなくなり、欠陥品となってしまう。どうなると気泡が発生してしまうのか、どうしたら取り除けるのか、経験的な知見しか広まっていない。ここでは、気泡や塗り広げの物理を理解するため、表面張力から流体力学的不安定性に至るまで物理学的な基礎を解説する。ここでいう物理学的性質とは、溶液や界面活性剤の種類によらない性質のことを意味しており、現場応用しやすいものである。塗り広げの流体力学的な本質を理解することで、諸問題に対して原理的な解決につながることを目指している。 基板に塗料を広げるとき、吹付方式や塗り広げによる塗装方法が多く使われている。吹付方式は、飛散量が多く、周囲への配慮や試料の無駄が多いことが問題となっている。一方、塗り広げにおいて、気泡が入りやすいという問題点があり、状況に応じて使い分けられている。ここでは、塗り広げにおける基礎的な法則について解説する。この章の内容は塗り広げ以外にも円筒中の流体など汎用性は高く、次の章で解説する気泡の付着が理解しやすくなるので、ぜひ理解していただければと思う。2.1 表面張力 空気中にスプレーなどで水を噴射すると、水はすぐに球状に変形する1)。この変形は、空気と水の間に働く表面張力によって起こる。表面張力とは、単位面積当たりの表面エネルギーのことであり、表面積を最小にする方向に力が働く※1。液体内部では分子は周囲の分子と相互作用しているため、エネルギーが低い状態であるが、表面では結合が半分になるため、相互作用エネルギーを損している。このエネルギー損失を表面エネルギーという。そのため、その単位面積当たりのエネルギーである表面張力は分子間の相互作用が大きいほど強い。例えば、水分子は水素結合を持っているため、表面張力が74mN/mと大きく、エタノールは22mN/mと小さい。 基板に液体を垂らしたとき、図1のように液体と基板の界面、および、液体と空気の表面が形成される。ここで、界面とは2つの相の境界面のことをいい、表面とは片方が空気のときに用いられる。物理的には同じものであるため、この先では空気との境界も界面で統一する。この液体を挟んだ2つの界面の影響は非常に大きく、最終的な安定状態を決定する。基板上に液滴を垂らしたとき、基板と液体との親和性によって、ある角度(接触角)θyを持った液滴が形成される。液滴には、基板−液体、液体−空気、基板−空気の3つの界面の間でそれぞれ界面張力 東京都立大学理学部 物理学科教授 栗田 玲※1: 内部の分子が引っ張るので内側方向に働く、という説明が時々見受けられるが、この説明は誤りである塗り広げと気泡の発生• こ

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