CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH 四1.はじめに2.プラスチックのリサイクルコンバーテック 2025. 482 近年、プラスチック資源のリサイクル技術に対する関心が高まっている。その背景には海洋プラスチックごみの深刻化、マイクロプラスチックによる生態系への影響、化石資源への依存問題などがある。こうした問題の解決に向けて、資源循環を促進するサーキュラーエコノミー(循環型経済)や脱炭素社会の実現、さらには生物多様性を保全しながら経済活動を持続可能にするネイチャーポジティブといった概念が注目されている。 従来のプラスチック利用は大量生産・大量消費・大量廃棄というリニアエコノミー(直線型経済)に基づいており、使用後の処理は焼却や埋立に依存してきた。しかし、焼却処理は温室効果ガスの排出を増大させ、埋立は限られた土地資源を圧迫するといった問題を抱えている。そのため、プラスチック資源のリサイクルを推進し、資源循環を実現することが急務となっている。サーキュラーエコノミーの考え方では、プラスチックを可能な限り再利用し、資源としての価値を最大化することが求められる。これにはマテリアルリサイクル(MR)、ケミカルリサイクル(CR)、エネルギー回収(サーマルリサイクル:TR)など、様々な技術が活用される。また、バイオプラスチックの開発や、使用量そのものを削減する取り組みも進められている。 脱炭素社会の観点からもプラスチックのリサイクルは重要な役割を果たす。プラスチック製造には石油や天然ガスが主に使用されるが、これらの化石資源の採掘・精製・加工には膨大なエネルギーが必要であり、CO2排出の大きな要因となっている。リサイクル技術を活用することで、新たなプラスチックの生産量を抑え、化石資源の使用削減やCO2排出の低減が期待される。さらにプラスチック問題の解決はネイチャーポジティブの実現にもつながる。適切に管理されないプラスチック廃棄物は、海洋や河川へ流出し、生態系に悪影響を及ぼす。特にマイクロプラスチックの影響は深刻であり、海洋生物の摂取を通じて生態系全体に広がる可能性が指摘されている。こうした環境負荷を低減し、持続可能な社会を構築するためには、リサイクル技術の進展とともに、製品設計や消費行動の変革も求められる。 本稿では合成繊維を含むプラスチックのリサイクル・資源循環を概説し1)〜4)、続いて最近、筆者らが見出した綿とポリエステルからなる混紡繊維の分別・リサイクル技術を紹介する。 世界的な脱炭素社会構築に向け、CO2排出量の削減が社会的に強く求められている。2020年にはプラスチックは全世界で3.7億トン製造されており、CO2の大きな発生源の1つに挙げられる。主に石油を原料とするプラスチック製品や合成繊維製品に対する脱炭素社会構築への貢献や資源循環達成のアプローチとして、サーキュラーエコノミーの重要性が指摘されている。プラスチックの用途は約40%がフィルム・シート、約15%が容器類であり、これらの多くは食品用包装材料を中心とするシングルユース用途である。今後、プラスチックの持続的利用に向けたシングルユース用途に対するあるべき姿の提示と対策は、喫急に取り組む社会的課題である。 プラスチックのリサイクルはTR,MR,CRに分類される。19年の日本の廃プラスチック総排出量は850万トンで、85%がリサイクルされている。TRは廃プラスチックの焼却により発生する熱エネルギーを回収して再利用する仕組みである。プラスチックは高い発熱量を有することから、エネルギー源として優れている。なお、欧米ではリサイクルの概念に燃焼を含めないため、TRはリサイクルとして捉えていない。 MRでは廃プラスチックを溶融・成形することで再利用し、CRでは廃プラスチックを化学的に分解し、再び材料として利用する。プラスチックは、同じ種類のものを回収しないとリサイクルしにくいという根本的な問題を有する。PETボトルは同じ材質で回収できるため、リサイクル技術が最も進んでおり、PETボトルリサイクル推進協議会によると2021年度のリサイクル率は86%に達する。一方、回収されたPETボトル等の廃プラスチックの一部は中国やASEAN諸国に輸出されていたが、大阪大学大学院工学研究科教授 宇山 浩問い合わせ uyama@chem.eng.osaka-u.ac.jpプラスチック資源を取り巻くリサイクル技術の現状
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