キ-CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH CCNVERTECH 図3 綿/ポリエステル混紡繊維の分別・リサイクル技術概要3.混紡繊維の分別・リサイクル技術コンバーテック 2025. 484BHETマテリアルリサイクル綿/ポリエステル混紡繊維ケミカルリサイクル綿なプラスチックの再生が可能である。 近年、マスバランス方式を導入したプラスチックリサイクルやバイオマスプラスチックの製造が注目されている。マスバランス方式は製品の製造プロセスにおいて、ある特性の原料とそうでない原料が混合される場合に、ある特性の原料の投入量に応じて生産する製品の一部にその特性を割り当てる手法を指す。紙製品、パーム油、電力等で既に適用されている。化学業界では、プラスチック製造にマスバランス方式を適用して、バイオマスプラスチックやリサイクルプラスチックが生産されつつある。 廃プラスチックの熱分解による油化は1970年代後半から開発が行われ、技術としては確立されたが、多くのエネルギーを必要とし、製造時に発火や爆発のリスクがあることから事業化されていない。しかし、最近は油化とクラッキングを組み合わせたCR技術の取り組みが海外で活発に行われている。この方式ではクローズドループで混合廃プラスチックをCRできる。第三者による認証済みのマスバランス方式に基づき、熱分解油からリサイクルされた原料の量を特定の最終製品に割り当てる。 世界全体のアパレル市場はコロナ後に拡大しており、市場規模は2023年で1.74兆米ドル、27年では1.94兆米ドルと推定されている。環境省の資料によると、国内のアパレル供給点数・市場規模は21年で36億点、10兆円である。一方でアパレル・ファッション産業は、大量消費・大量廃棄のビジネスモデルが広がったこともあり、環境負荷が極めて大きいと指摘されている。世界では毎年、9200万トンに上る衣料品が廃棄されており、焼却により人間活動の10%に相当する多くのCO2が放出されて地球温暖化につながっている。また、繊維・衣料品の製造時には500万人分の生活水に相当する大量の水(930億m3)を使用し、衣料品から海洋に流出するプラスチックの5〜6%を占める50万トンのマイクロプラスチックが海洋に流出している。そのため、原材料調達から生産・流通、使用、廃棄に至る各段階での環境負荷やサプライチェーンの問題が指摘されるだけでなく、ネイチャーポジティブへの配慮なども求められる。 経済産業省・NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の資料によると、日本では22年に年間70万トンの衣料品が使用後に手放され、その19%がリユースされ、15%が産業資材として利用されているが、残りの66%は廃棄されている。世界の衣料品リユース市場は急速に拡大し、27年には22年比で約2倍規模になると推定されているが、古着売買やシェアリングサービスによるものである。そのため、使用後の衣料品を原料とする繊維to繊維リサイクルを推進して、廃棄量や原材料調達・廃棄で発生するCO2排出量を削減し、環境負荷を低減することがアパレル産業に対して社会的に求められている。この世界的な動きに呼応して、世界のアパレル大企業は環境対策に積極的に取り組んでおり、30年までに全使用素材の約50%をリサイクル素材に切り替えることを目標としている企業もある。 衣料品の半分近くは綿/ポリエステル混紡繊維であるが、プラスチックと同様、リサイクルには同一素材であることが必要である。例えば、フリースは多くの場合にポリエステル製であり、リサイクルして再度、ポリエステル製衣料品を作ることができる。綿は肌触りが良く、吸水性や保湿性に優れ、通気性がある一方、ポリエステルはシワになりにくく、型崩れしづらく、加工もしやすく、さらに速乾性に優れる。綿/ポリエステル混紡繊維は綿とポリエステルの両方の特徴を有するため、ポロシャツ、シャツ、ズボン等に幅広く利用されている。 筆者らは綿/ポリエステル混紡繊維を分別・リサイクルする技術を開発した。マイクロ波をわずか数分間照射すると綿はMRされ、ポリエステルはCRによってPETの前駆体であるBHETが高純度で回収された(図3)。綿には作用せず、ポリエステルを選択的に分解してポリエステル前駆体に変換する触媒を見出すことで、混紡繊維の分別を可能にした。マイクロ波は電磁波の1つで、電磁波は波長や周波数によって特徴やその用途が異なる。電子レンジは電磁波を加熱対象に当てることで熱を発生させており、マイクロ波加熱は放射の1つである。加熱対象がマイクロ波の電界の中にあると、加熱対象を構成している分子が電波の影響を受けて激しく振動し、分子と分子がぶつかり合う。本技術ではこのようなマイクロ波の特徴を活かして、迅速な分解反応を引き起こしていると思われる。 本技術では、適切な触媒を用いてエチレングリコール中でポリエステル繊維を選択的に分解(解重合)することで、BHETに変換する(図4)。エチレングリコールは沸点が高く、CRを高温で実施するのに好適な溶媒であるとともに、一部はPET分解時の基質として作用する。触媒の選定も重要であり、安全性に優れる安価なケミカルがマイクロ波照射によるPET分解に高い触媒活性を示し、わずか数分のマイクロ波照射によって分解反応が進行した。この触媒は綿(セルロース)には作用しないため、反応液中に綿はそのままで残り、ほぼ定量的に回収された。また、反応液から簡単な結晶化操作によって、高純度のBHET結晶として取り出すことができた(収率〜70%)。 マイクロ波照射前後の繊維の外観は変化しておらず、走査電子顕微鏡(SEM)観察とFT-IRによる構造解析から繊維形状を
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