コンバーテック2025年4月号_見本
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CDNVERTECH C口NVERTECHCDNVERTECH CDNVERTECH CDNVERTECH CDNVERTECH CDNVERTECH CDNVERTECH C口NVERTECHTRACFONE \ F09 Mo叫ntsThat Matter‘ 107図5  初期のPCのディスプレイにはブラウン管が使われていたが、やがて全面的に液晶タイプに替わった図7  液晶ディスプレイの大型化・薄型化に伴い、不活性ガスの需要も増えた図6  ノートPCは液晶ディスプレイによって実用化された。併せて不活性ガスの需要を大きく伸ばした電子材料の今昔(図6)。していたが、少々大きなモニターになるとディスプレイは平面であることが強く要求されるようになった(図5)。そこで登場したのは表面が平らな大型液晶ディスプレイである。今では当たり前のように使われているノートPCやタブレットPCも、ヘリウムやアルゴンなしでは製品にならない  液晶ディスプレイは大きなサイズを作るのが容易であるため、壁掛けテレビのように薄くて大きなディスプレイが作られるようになり、その結果、そこで消費される不活性ガスの量はさらに増えた(図7)。この頃は“軽薄短小”と称して小さいものがもてはやされたが、逆に大きくすることで価値が生み出されるようになった。何しろ半導体や石英ファイバーの工場ではヘリウム、ネオン、アルゴンなどの不活性ガスが湯水のように使われていた。 21世紀に入ると、あらゆるディスプレイはブラウン管からフラットパネルディスプレイ(FPD)に変わり、さらにコンバーテック 2025. 4多くの不活性ガスを消費することになった。天文学的な量のヘリウムやネオン、アルゴンなどが洗浄などの工程で使われるようになった。当初これらのプロセスで生産されるFPDのサイズは30〜40インチだったが、短期間のうちに50〜60インチに成長し、やがてパブリックビューイングで使われる平面ディスプレイは何十メートルもの大きさになっている。 モニター用ディスプレイも大きくなっている。テレビのスタジオや屋外競技場のモニターにおいては、幅10mを超えるものもできている。今後、液晶以外でもペーパーディスプレイやLEDディスプレイなどが実用化されてくると予想されるが、不活性ガスの需要が増え続けることは間違いない。 一方、原子量の大きな不活性ガスであるクリプトンやキセノンにおいては、新しい用途開発が進んでいる。宇宙空間ではイオンエンジンが主要な推進装置になると考えられているが、そこでは質量の大きい原子が効率の良い推進剤となり、現実的にはクリプトンやキセノンが主要な推進薬として使われている。日本の惑星探査機がキセノンのイオンエンジンを使って小惑星からサンプルを持ち帰ることに成功したことは記憶に新しい。 紫外線レーザーは短い波長のレーザーとして使用例が増えているが、今後、そこで使われるクリプトンやキセノンの量も増えていくものと推測される。特に医療用のCTスキャナなどは連続的にキセノンを消費するので、不活性ガスにとって重要な需要家になるものと考えられる。 また、大きく需要が増加したものとしてネオンサインがある。ネオン管のチューブの中にネオンガスを封入して放電すると発光し、夜の下町に賑わいをもたらす。この時発生する光の色は、封入する不活性ガスの種類と割合によって変わってくる。ネオンガスが封入されている発光デバイスなのでネオンサインという名称が一般化しており、特にネオンガスが使われていなくても、ネオンサインと呼ばれている。実際ネオンガスはかなり高価なため、アルゴンガスが使われている看板などもネオンサインといわれている。 不活性ガスの沸点は比較的低いので、液体窒素温度でも凍らないものがある。元素の周期表でいうと、アルゴンまでは液体窒素で凝固せず、クリプトンでようやく固体になる。ヘリウムは最も凝固しにくい物質であり、−169℃まで液化しない。ヘリウムなしでは絶対温度で4℃までは凝固させることができない。これまでの冷凍技術では、−169℃以下に冷やすことが難しく、これより低い温度を実現することが難しかった。現在の冷凍技術では、最も低い温度として絶対温度で4℃未満を記録しているが、この温度を実現するため4.不活性ガスの新用途

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