国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)と国立大学法人 筑波大学を中心とする研究チームは、ホウ素と水素のみからなる導電性を持つ新たなナノシート材料を開発した。また(公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)と共同で、ナノシートを構成する水素原子が特殊な配置を取っており、その構造が原因で分子が吸着することにより導電性が大きく変化することを明らかにした。軽量かつフレキシブルで、導電性を制御できる本材料は、ウェアラブルな電子デバイスや新しいメカニズムのセンサーなどへの応用展開が期待できる。
 グラフェンに代表される原子・分子レベルの非常に薄い導電性ナノシート材料は、柔軟性や特異な電子状態を持つことから、キャパシターなどの電子デバイスへの応用が期待されている。その中で、グラフェンを超える優れた電子特性を持つと理論的に予想されていたものが、ホウ素と水素のみからなるホウ化水素ナノシート。この材料は合成が非常に困難であることが知られていたが、2017年に筑波大学やNIMSなどの研究チームが、ホウ化水素ナノシートの合成に世界で初めて成功した。ところがその特性を調べたところ、予測とは異なり導電性を持たない絶縁体であった。そこで、なぜ理論的な予測と違って導電性を持たないのかを明らかにすることで、導電性を持つホウ化水素ナノシートの合成を目指した研究が進められてきた。
 今回研究チームは、導電性を持たない原因が表面に吸着する不純物にあることを明らかにし、試料の純度を高める適切な前処理をすることで、安定して導電性を発現するホウ化水素ナノシートの合成に成功した。さらに、導電性発現に関するメカニズムを詳細に調べるため、大型放射光施設SPring-8を利用してホウ化水素ナノシートの構造を解析したところ、水素原子が特殊な配置を取っており、その構造によって電気的な偏りが発生し、そこに微量の有機分子が吸着することで導電性が安定していなかったことを明らかにした。
 本成果は、有機分子の吸着によって導電性を制御できる可能性を示しており、ホウ化水素ナノシートの大きな特徴の1つと考えられる。この特徴を生かすことで、分子の吸着性を利用した分子応答性のセンサー材料や触媒材料など、導電性ナノシート材料の全く新しいデバイス応用が期待できる。
 本研究は、NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)ソフト化学グループの冨中悟史主任研究員と、筑波大学数理物質系の近藤剛弘准教授、JASRI放射光利用研究基盤センターの尾原幸治主幹研究員、国立大学法人東京大学物性研究所の松田 巌准教授および国立大学法人 東京工業大学の元素戦略研究センター 細野秀雄栄誉教授らの共同研究チームによって行われた。また、本研究は、文部科学省科学研究費補助金事業 (18H03874, 18K05192, 19H02551, 19H05046) および文部科学省元素戦略プロジェクト (研究拠点形成型) 東工大元素戦略拠点 (TIES) による支援の下で行われた。
 本研究成果は、Chem誌にて現地時間2019年12月9日午前11時 (日本時間10日午前1時) にオンライン公開された。
SnapCrab NoName 2019 12 11 18 49 24 No 00<掲載論文>
題  目 : Geometrical Frustration of B-H bonds in Layered Hydrogen Borides Accessible by Soft Chemistry
著  者 : Satoshi Tominaka, Ryota Ishibiki, Asahi Fujino, Kohsaku Kawakami, Koji Ohara, Takuya Masuda, Iwao Matsuda, Hideo Hosono, and Takahiro Kondo
雑  誌 : Chem
掲載日時 : 米国東部時間2019年12月9日午前11時 (日本時間10日午前1時)
DOI    : 10.1016/j.chempr.2019.11.006