花王(株)国立大学法人京都大学は、「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」の確立に向け、1月から、花王サニタリープロダクツ愛媛(*1)のある愛媛県西条市の協力のもと、実証実験を開始する。実証実験を通して、使用済み紙おむつを炭素素材へ変換し、CO2排出量削減による環境負荷低減に貢献する。今後、紙おむつを炭素化した素材の産業利用を進めると共に、空気・水環境の浄化、植物の育成促進への活用など地球環境改善につながる研究技術開発をさらに推進していく。リサイクルシステムの社会実装は、2025年以降を予定している。
 なお、リサイクルシステムの開発は、京都大学オープンイノベーション機構(*2)と花王が協力して実施する。
*1 1978年に設立、サニタリー製品の供給拠点として「メリーズ」「ロリエ」などを生産
*2 京都大学の研究テーマをベースに「組織」対「組織」の本格的な大型共同研究を企画し実施する研究拠点

■背景
 使用済み紙おむつは、現在、年間200万トン以上がごみとして主に焼却処理されており、燃えるごみの4~6%を占めると言われている。また、多くの水分を吸収しているため、焼却炉の燃焼効率を悪化させる原因になっているケースもある。今後、高齢化による大人用紙おむつの使用量増加に伴いごみの量が増え、環境に与える影響が大きくなると予想されており、有効なリサイクル技術の確立が期待されている一方で、実現には多くの課題がある。使用済み紙おむつリサイクルの抱える主な課題として、(1)使用済み紙おむつは排泄物を含み、2~4倍の重量になるため、保管・回収・運搬時にかさばる、悪臭の発生など衛生面に関する課題があり、頻繁な回収が必要となる、(2)リサイクルするためには、構成素材を種類ごとに分離する必要があるが、紙おむつはパルプと多種のプラスチックで構成されており、種類ごとの分離が技術的に難しい側面がある、ことが挙げられる。
 上記、課題を克服するため愛媛県西条市において「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」の実証実験を開始することになった。

■研究手法
 具体的には、使用済み紙おむつを回収前に炭素化する、炭素化装置を開発する。装置開発におけるポイントは、少ないエネルギーインプット(低温反応)で、短時間で効率的に炭素化し、殺菌・消臭しながら体積を減らす点。衛生面の課題解決に加え、体積が減るため回収頻度を減らすことができる。使用済み紙おむつが燃やされる際にはCO2が発生するが、炭素化する場合は炭化物に炭素が固定化されるため、発生するCO2を削減することができ、環境負荷低減につながる。また、炭素化装置により炭素化した使用済み紙おむつの炭素素材への変換に向けた研究技術開発を行なっていく。

 愛媛県西条市での実証実験では、西条市の協力のもと、使用済み紙おむつが発生する現場である保育施設1カ所で、リサイクルに取り組む。今年1月から、介護施設で利用実績があるおむつ処理装置を設置し、発生するごみの量や作業量、継続性など現場における運用面の課題を確認すると同時に、おむつ処理装置を基盤として、炭素化装置の開発も進める。4月以降に、開発した炭素化装置を設置し、使用済み紙おむつを殺菌・消臭、体積を減らしたうえで回収する。炭素化した使用済み紙おむつは容積が小さいため、回収頻度は月1~2回と少なく済み、回収後は、環境浄化や保育施設の園庭での植物育成促進に活用する。また、活性炭などの炭素素材への変換をめざし、研究開発を進めていく。
 また、今回の実証実験の中で、花王より子育て支援の一環として、実証実験を実施する保育施設にベビー用紙おむつ「メリーズ」が提供される。これまで園児の保護者は、登園にあたり自身で紙おむつを準備し、使用済みおむつは保育施設でごみとして出され、焼却処理されるシステムであった。保育施設でおむつが提供され、「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」が確立されれば、保護者・保育士の負担軽減が見込まれる。
 今回の実証実験を通し得られた知見は、国内の都市、プラスチックごみ問題が深刻な東南アジアをはじめとする海外に展開し、より広い範囲での使用済み紙おむつの課題解決に貢献していく。
 「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」を確立することにより、使用済み紙おむつリサイクルが抱える課題を解決し、紙おむつを炭素化した素材を産業利用していくことで、リサイクルとCO2削減、プラスチックごみ問題の解決など地球環境改善ひいては、SDGs達成に向け貢献していく。