積水化学工業(株)は、2030年度までの長期ビジョン「Vision2030」において、「“Innovation for the Earth”サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、“未来につづく安心”を創造します」をビジョンステートメントに掲げ、社会の持続可能性向上と同社グループの利益ある成長の両立を目指すESG経営に注力している。今般、ESG経営の重要課題の1つである環境課題において、気候変動課題の解決に資する資源循環方針およびその戦略を策定し、2050年にサーキュラーエコノミーの実現を目指す。また2022年度を目標達成年とする環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプランAccelerateⅡ」を推進している。これらを今後着実に推進することにより、“未来につづく安心”を創造していく。

1.資源循環方針および戦略の策定
 資源循環に関する課題は長期にわたり解決策を展開していく必要がある。同社は2050年に“サーキュラーエコノミーの実現”を目指し、資源循環方針を策定した。また長期ゴールからバックキャストを行い、この方針にもとづく戦略およびロードマップを策定した。
 メーカーとして製品のライフサイクルにおける資源循環を推進していくことが重要と考え、サプライチェーンと連携し、化石由来のバージン原料の使用量を最小化するとともに、再資源化による資源循環を推進し、事業を通じたサーキュラーエコノミーの実現を目指す。
 以下、3点がグループ方針となる。
① 資源循環に資するイノベーションを推進する
② 事業活動で使用する非化石由来および再生材料の使用を拡大する
③ ライフサイクルにおいて排出される廃棄物においてはマテリアルへの再資源化を最大化する
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図 積水化学グループの資源循環戦略イメージ図

 積水化学グループは、「Vision2030」において、戦略的に事業領域を拡大し、社会課題解決を通じて業容を倍にすることで持続可能な社会の実現と企業成長を目指している。いずれの事業領域においても、プラスチックはこれからも重要な材料の1つ。これまでの生産工程では、廃棄物排出量を削減するために、生産量原単位を指標として削減する努力を継続してきた。また、発生した端材等は原料に戻して再利用する内部リサイクルをしてきた。廃棄物として処理する際には、エネルギーを含む再生原料として活用する処分を実施してきた。
 新たに策定した資源循環方針では、使用するプラスチック原料については、バイオプラスチックなどの非化石由来や再生原料の使用を拡大していく。生産工程については、これまで以上に内部リサイクルを進め、施工においては現場における廃棄物の発生量を最小化するよう取り組みを推進する。さらに使用・回収段階においても、廃棄される際の分離分別が徹底できるような製品設計やサプライチェーンへの働きかけを行い、メカニカルリサイクル、ケミカルリサイクル※1などマテリアルへの再資源化を最大化する取り組みを推進していく。
※1 ケミカルリサイクル 積水化学グループは、可燃ごみをガス化し、そのガスから微生物の力でプラスチックの原料となるエタノールをつくるケミカルリサイクル技術を開発している。埼玉県寄居町のパイロットプラントでの検討を経て、現在、岩手県久慈市で商用10分の1規模(処理量約20トン/日)の実証プラントを2022年稼働予定で建設中。
 これらのライフサイクルで資源循環を推進していくためには、製品設計段階のイノベーションが重要だと考えている。新製品の設計あるいは既存製品の各プロセスを見直すことで、資源循環を加速するイノベーションとなるよう取り組みを進めていく。
 資源循環への取り組みは、原料に起因する温室効果ガス排出量、廃棄物処理時に発生する温室効果ガス排出量の削減にもつながるため、脱炭素戦略としても必要な取り組み。同社では、このほかに「スマートハイムでんき」サービスの拡大や「ZEH仕様住宅」の拡販などにより脱炭素の実現を目指す。同社グループの有する化学と住宅など多様な事業が脱炭素と資源循環の両立を目指す独自の戦略の実現を可能にすると考えている。

表 長期目標達成のためのロードマップ
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2.環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプランAccelerate II」(2020~2022年度)進捗
 環境長期ビジョンの実現を目指し、気候変動や資源循環、水リスクといった環境課題に重点をおき、2020年度からの環境中期計画を遂行中。                                                                                           
表 環境中期計画の目標と2020年度の実績
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注1)リターン率の計算は、東京都市大学伊坪教授らにより開発されたLIME2の考え方に基づいたLCA計算システム「MiLCA」を使用 
注2)COD(Chemical Oxygen Demand):化学的酸素要求量。水中の含有物質を酸化するために必要とされる酸素量(酸素消費量)であり、水質の指標の1つ。CODが高いと含有される有機物、無機物 の量が多い水であり、水質が悪いと判断される。

2-1 統合指標
 製品による環境課題解決への貢献が拡大し、統合指標における自然資本および社会資本へのリタ―ン率は121.9%と昨年度比で7.4ポイント向上し目標を達成した。今後も自然資本および社会資本へのリターン率100%以上を維持しながら、2030年度の業容倍増を目指し、取り組みを進めていく。

2-2 サステナビリティ貢献製品
 サステナビリティ貢献製品は、利益創出力と社会課題解決貢献力の双方を高めるための戦略枠“プレミアム枠”の設定と戦略の立案、マネジメントを開始した。持続経営力効果のための製品毎の“持続性評価”も確認を始動している。
 サステナビリティ貢献製品の売上高目標に関しては達成できなかったが、売上高比率は60.6%と、前年度から2.3ポイントアップとなり、社会課題解決への貢献度が高い製品へと事業ポートフォリオを変革できていることは確認できた。今後は、資源循環に資するサステナビリティ貢献製品の拡大や、化石由来および再生原料を使用した製品の拡大などに重点をおいて、さらなる製品創出と市場拡大を図っていく。
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図 サステナビリティ貢献製品の売上高および比率の推移

2-3 気候変動課題に対する取り組み
 温室効果ガス排出量の削減に関しては、今環境中期計画(2020〜2022年度)から、使用電力の再生可能エネルギーへの転換に軸足をおいた“エネルギー調達革新”の段階に移行している(下図参照)。
 自社事業所内で消費するための太陽光発電設備を設置する、外部から購入する電力を再生可能エネルギー由来に切り換えるなど、再生可能エネルギーへの転換を2020年度から積極的に推進している。新たに5カ所の太陽光発電設備を設置し、国内外10カ所の事業所における太陽光発電設備の総発電出力は6.3MWに達した。また、外部からの購入電力については、国内外8カ所の事業所で100%再生可能エネルギーへと切り換えが完了している。その結果、2020年度の購入電力の再生可能エネルギー比率は、太陽光発電設備による自家消費電力を含めて7.2%となった。
 2020年8月にはRE100※2に加盟しており、再生可能エネルギーの積極的活用を自社のみならず、社会で推進していく。
※2 RE100(Renewable Energy 100%の略称):RE100はThe Climate GroupがCDPとのパートナーシップのもとで主催し、We Mean Business連合の一部としても運営。日本では2017年より日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が、RE100の公式地域パートナーとして日本企業の参加と活動を支援している。
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図 温室効果ガス削減のロードマップ
注)BAU(Business As Usual):通常の経済活動に伴い、増加する排出量

 2020年度は、購入電力の再生可能エネルギーへの転換、前環境中期計画において実施した環境貢献投資の効果発現、および新型コロナウイルスの影響による生産量の減少などにより、事業活動における温室効果ガス排出量の削減率は19.3%(2013年度比)となり、2020年度目標7%削減(同年度比)を達成し、中期目標9%削減(同年度比)も前倒しで達成している。 今後、2019年4月より始動しているサービス「スマートハイムでんき」の活用や、ESG投資枠400億円の活用などにより、2030年マイルストーンの前倒しも検討していく。                                
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図 事業活動における温室効果ガス排出量の推移
 同社は、2018年6月、化学業界として世界で初めてSBT認証※3を取得し、長期目線での温室効果ガス排出量削減の目標を設定し、サプライチェーンと連携して取り組む意思表明を行っている。サプライチェーンの温室効果ガス排出量(SCOPE3)の削減率は、2016年度比で10.8%となり、2020年度目標7.7%削減(同年度比)を達成できた。購入した製品・サービスの排出量は削減が進まず4.7%増加(同年度比)となったが、製品の使用時における排出量が54.0%削減(同年度比)となった。これは、住宅事業におけるZEH仕様住宅の比率が2020年度には85%となり、目標65%を大幅に上回ったことが要因。
 今後は、サプライチェーンとの連携、社会や生活者の啓発などを実施し、さらに温室効果ガスを削減できるよう推進していく。
※3 SBT(Science Based Targets):パリ協定の採択を契機として国連グローバルコンパクトをはじめとする共同イニシアチブが提唱。SBTイニシアチブにより、企業が定めた温室効果ガス削減目標が、長期的な気候変動対策に貢献する科学的に整合した目標(SBT)であることが認定される。
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図 サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量の推移

 気候変動課題に対する戦略においては、自社に対する気候変動によるリスクを把握し、そのリスク低減やリスクを機会に転換できるような取り組み、事業を検討し策定している。これらの経緯をTCFD※4の提言に基づく情報開示として、2019年1月に賛同して以来、定期的に見直しを行い公開している(最新見直しは2021年7月30日公開)。
※4 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):2015年に金融システムの安定化を図る国際的組織である金融安定理事会(FSB)により設立された気候変動関連財務情報開示タスクフォース。

2-4 資源枯渇課題に対する取り組み
 資源枯渇課題に対しては、2050年サーキュラーエコノミーの実現を目指し、マテリアルへの再資源化を推進するため、資源循環方針を策定し、戦略およびロードマップを策定した(前項参照)。今後は、ロードマップに基づいて取り組みを進めていく。 資源循環の推進により、関連する海洋プラスチック問題などの諸問題を解決していくため、さまざまな企業、業界団体(CLOMA、JaIMEなど)とのイニシアチブにも積極的に参加し、連携した取り組みによって、解決を加速させていく。

2-5 水リスク課題に対する取り組み
 2050年には水リスクを最小化できるようバックキャストしてマイルストーンを設定し、取り組みを推進している。
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図 水リスク低減のロードマップ

 水資源の保全を含む自然資本へのリターンを加速するため、サステナビリティ貢献製品の開発を継続していくことでも地域の水課題の解決やサプライチェーン上の環境負荷最小化に貢献していく。さらに今後は、世界各国の拠点の取り組みとして、2030〜2050年にかけて水源流域関係者との協働体制を構築することで地域の水課題にも貢献していく。

2-6 社会課題解決貢献力向上に対する取り組み
 社会課題解決貢献力の向上のための風土づくり、人づくりのために、教育や社会貢献活動を通じた取り組みを推進していく。2020年度には、人材指標や、活動内容を確定した。
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 図 社会課題解決貢献力向上のための教育と活動の位置づけ

 従業員の現業での経験を通じた成長を後押しすることに加えて、社会課題解決を認識し行動する力を育てる教育を実施する。社会課題を念頭においた活動を従業員が主体的に行うことにより、意識の変容を図り、社会課題解決貢献力を向上させていく。