日揮ホールディングス、石油資源開発(JAPEX)、および川崎汽船の3社は、マレーシア国営エネルギー会社であるPetroliam Nasional Berhad(以下「ペトロナス」)の子会社であるPETRONAS CCS Ventures SDN BHD(以下「PCCSV」)と、マレーシアにおけるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素(CO2)の回収・貯留)の事業化実現に向けた検討の実施に合意し、4社による基本契約を2023年9月22日に締結した。
日本で開催された調印式には、経済産業省資源エネルギー庁の佐伯CCS政策室長の立会いのもと、ペトロナス社長兼グループCEOのYM Tan Sri Tengku M Taufik氏、日揮ホールディングス常務執行役員の秋鹿正敬氏、JAPEX代表取締役社長の藤田昌宏氏、川崎汽船常務執行役員の金森 聡氏が出席。関係先より公表の合意を得て、2023年11月20日、発表に至った。
2022年1月にペトロナスとJAPEXにより開始し、同年7月の日揮HD子会社である日揮グローバルと川崎汽船の参加後は4社で進めてきたマレーシアCCS共同スタディにおける、CO2地下貯留能力、CO2排出源からの海上輸送ならびに圧入方法などの調査を踏まえ、同国の海域において特定された枯渇油ガス田群および付帯する塩水帯水層を貯留対象とすることが、CO2圧入の実効性、早期の事業実現可能性を極大化すると判断したことから、本検討の実施に合意した。
本検討では、今後、2024年の基本設計作業開始とその後の建設作業を視野に入れた具体的な準備作業に着手し、マレーシア国内で排出されるCO2に加え、日本など海外で回収されたCO2を船舶輸送し、海底下への圧入・貯留を2028年末に開始することを目指し、マレーシア国内のCO2を収集する陸上設備からのCO2輸送パイプラインの敷設、船舶輸送される液化CO2の受入設備、ならびに海洋圧入設備など、必要な設備の仕様や費用の積算、事業スキームなどの詳細な検討を進めていく。また、本CCS事業実現に向けて、PCCSV並びに日本側3社は、マレーシアの関係先と緊密に連携していく。
PCCSVおよび日本側3社は、2020年代中盤の事業化決定と2028年末の操業開始を目指し、本検討を進めていく予定。なお、本検討で目指すCO2圧入量は、事業開始時点でマレーシア国内および日本を含む同国外からの輸送分を合わせ年間約200万トン以上、2030年には同約500万トンを目標とし、さらに2030年代前半には同1,000万t以上への圧入量拡大も視野に入れていく。
また、日本側3社は、JFEスチールと今年6月から進めている、日本を起点としたCCSのバリューチェーン構築の共同検討を引き続き進めることにより、本検討との連携を図る。
日揮ホールディングス、JAPEX、および川崎汽船は、早期のCCS事業実現に向けた本検討の推進を通じ、「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(Asia Energy Transition Initiative:AETI(エイティ)*1」が目指すアジア地域の脱炭素社会の実現へ貢献していく。
*1 2021年5月に日本政府が発表した、アジアの持続的な経済成長とカーボンニュートラルの同時達成に向けたイニシアティブ