NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)に向けて、海外主要国のカーボンニュートラル(CN)に関する政策などの動向を調査分析し、その結果をまとめたTSC Foresight短信レポート「COP28に向けたCNに関する海外主要国(米・中・EU・英・独・インドネシア・インド・UAE・サウジアラビア)の動向」を公表した。
NEDOでは、エネルギー・地球環境問題の解決などをミッションとしており、こうした国際的な動向も考慮に入れつつ、各国のファンディングエージェンシーや研究機関との連携の他、各種国際プロジェクトの組成および実施に取り組んでいるところであり、今後もこうした活動を一層加速させる。
概要
世界各地で猛暑や豪雨など、さまざまな気象災害が顕在化している中、2023年7月、国連事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した」と警鐘を鳴らし、改めて気候変動対策の必要性を強調した。
しかし、G20会合をはじめとするさまざまなエネルギー関連の国際会議においては、各国の事情に配慮したエネルギー転換の「多様な道筋」を認めようという一般論には合意がなされる一方、再生可能エネルギーの導入目標や化石燃料の扱いなどの各論において意見がまとまらない事態も発生している。
本レポートでは、以下3つの視点から主要国のCNを巡る政策、技術動向などを調査した。
(1)COP27以降の主要国のエネルギー政策・投資・国際連携の動向
(2)グローバルサウスとして台頭する途上国の動向
(3)中東諸国における脱炭素を巡る動向
調査の詳細
昨年度に引き続き、COP開催前にCNに関する主要国の状況などを総括したが、主要国におけるCNの大方針は変わらない一方で、各論においては一部で大きな転換も見られた。
(1)COP27以降の主要国のエネルギー政策・投資・国際連携の動向
先進国においては、CNに係る自国産業の振興が至上命題であり、EUにおいては欧州グリーンディール産業計画が策定されるなど、米国のインフレ抑制法を発端とした自国産業保護・振興政策が一層加速する動きがあった。加えて、自国経済や安全保障への懸念から、ガソリン/ディーゼルの新規販売禁止時期の延期やCCSなどの低炭素化技術の活用など、化石エネルギーを活用しつつもCNを達成しようという動きが顕著に見られた。
(2)グローバルサウスとして台頭する途上国の動向
グローバルサウスとして台頭してきた途上国は、CNに対する支援を先進国に求めるだけでなく、自らの擁する鉱物資源や次世代エネルギー製造拠点としての潜在能力、さらには国際政治面での立ち位置などもカードとし、国際社会において大きな存在感を発揮する様子が伺えた。その結果、先進主要国にとってもCN政策を進めていく上で途上国との協調が不可欠となり、先進国~途上国間の連携協定締結の動きも活発になった。
(3)中東諸国における脱炭素を巡る動向
グローバルサウスの一角を構成し世界有数の石油や天然ガスの産出地域でもある中東諸国は、世界的なCN実現に向けた潮流の中、脱炭素と自国経済構造の大変換を迫られ、化石燃料からCN燃料の産出国としての変貌を視野に入れている。事実、地政学的な強みを活かしつつ、先進国との技術協力を含めた連携を一層強化する動きが確認された。
今後の予定
NEDOでは、こうした国際的な動向も考慮に入れつつ、各国のファンディングエージェンシーや研究機関との連携や、各種国際プロジェクトの組成および実施に取り組んでいるところであり、今回の調査・分析の結果も踏まえつつ、今後もこの動きを一層加速していく。