(株)アルバックは、自動運転や次世代ウェアラブル端末(スマートグラス等)実現のためのMEMS デバイス開発に障壁となっていた技術課題を解決する、PZT圧電薄膜のスパッタリング量産技術の高度化を実現し、量産向け装置の販売を開始する。
 5G や AI などテクノロジーの進化により、あらゆる産業がエレクトロニクス化するスマート 社会が一層進展し、産業や生活の利便性が増すことが期待されている。自動運転や AR/VR、 セキュリティ、スマートフォン等の多機能化にあたっては、各種センサーやフィードバックされた情報をもとに様々なデバイスを動かすアクチュエーターが必要とされ、需要は爆発的に高まる見込み。それらの開発にあたっては小型化・低消費電力化・高性能化・生産コスト低減等が課題となっている。
 センサーやアクチュエーターのキーテクノロジーである PZT 圧電薄膜は、従来一般的であった塗布法(Sol-Gel)では低温プロセス形成が不可能であったが、アルバックは 2015 年にPZT圧電薄膜を低温スパッタリングプロセスで形成する世界最高レベルの技術を実現し、次世代MEMS技術として開発を進めてきた。
 今回この独自技術をより進化させることにより、デバイスの実用化に求められる信頼性を大幅に向上させ、さらに装置運用の最適化を行うことでランニングコストの改善などを同時に満たす世界最高水準の量産技術を実現し、装置販売を開始する。
 これらの技術により、MEMS デバイスの半導体(CMOS)融合と小型化・低消費電力化・高性能化・生産コスト低減等を同時に実現することが可能となり、3D 指紋認証などセンサーとしての活用範囲の拡大に加え、スマートグラスなどによる空間情報センシングや立体画像表示などのセンサーやアクチュエーターとしての活用の可能性も大きく広がることが期待される。

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スパッタリング装置「SME-200」(写真左)  俯瞰写真 8チャンバ構成(7 室のプロセス室とロードロック室、写真右)

【技術の概要】
 PZT薄膜を用いた MEMS デバイスはシリコン基板上に密着層、下部電極層、バッファ層、圧電 層(PZT)、上部電極層と大きく分けて 5 つの層で形成される。これら全てを積層した構造はアルバックの枚葉式スパッタリング装置「SME-200」で大気を介さず同一装置内で形成可能。
 これにより、各積層膜に対して最適化されたプロセス室で連続的な処理を行うことができ、再現 性の高い積層プロセスの実現と、スループットの改善が可能。この装置はMEMSデバイス製造ラインでは大型基板にあたるφ8 インチシリコン基板へ高均一で安定的に素子形成することを技術開発の前提とし、DCおよびRF マグネトロンスパッタリング室、結晶化促進のための RTA(Rapid Thermal Annealing)室等、最大 7 室のプロセス室と、ロードロック室(仕込/取出室)の搭載が可能となる。
 アルバックのPZTスパッタリング装置は、PZT特有の問題を克服したPZT専用スパッタリング チャンバを採用し、加熱した基板上に PZT 薄膜を結晶成長させながら堆積させることができる。また、PZT 薄膜の低温プロセスの実現にはアルバック独自のプロセス技術としてバッファ層をはじめとする新技術を採用し、500°C以下の低温プロセスでありながら優れた圧電性能※1 と高信頼性※2 を両立、メンテナンスサイクルの最適化により、ランニングコストを改善し競合技術に対して25%減、PZT 薄膜において世界最高レベルの性能を量産条件で確認している。

※1 圧電性能:圧電定数(e31)が高いほど、デバイスに印加した電圧当たりの動作量が大きくな り、デバイスの小型化、低消費電力化が可能となる。(圧電定数 e31 : -15.5 C/m2@PZT 膜厚:2.0 μm)
※2 高信頼性:デバイスの耐久性の高さを示す指標として、絶縁破壊電圧: ~200V、絶縁破壊の時間依存性(TDDB:Time Dependent Dielectric Breakdown):200 万時間を確認している。

【技術の特長】
1. 枚葉式スパッタリング装置により各積層構造を同一装置内で成膜可能
2.独自プロセスによる500℃以下の低温プロセスで高性能なPZT薄膜を量産技術で実現
3.
新プロセスの採用により、高いデバイス信頼性の実現
4. ランニングコストを従来(2015年対比)の75%に低減