【インフラの強靭化】大日本印刷、鋼材の腐食抑制と状態確認を両立させた「DNP EB防錆粘着シート」開発
大日本印刷(DNP)は、橋梁など屋外設備の鋼製構造物を腐食から守りながら、シートの貼付後も表面の状態を確認できる透明な「DNP EB防錆(ぼうせい)粘着シート」を開発した。製品は2027年度に販売を開始する予定。
防錆対策を行いながら、シートを剥がすことなく鋼材の状態確認ができるため、補修が必要な箇所の早期発見や、インフラの維持管理の効率化に貢献する。開発にあたって実施した屋外曝露試験では、2年経過後もシート施工部で錆の発生が認められなかった。現在は、複数の企業と連携して実際の使用を想定した環境下で実証評価を進めている。


【開発の背景】
国内では、橋梁などの鋼製インフラの老朽化が進み、修繕費用の増加や点検・施工人材の不足が課題となっている。こうしたなか、損傷が深刻化してから補修する「事後保全」から、早期に劣化を発見して対応する「予防保全」への転換が求められている。その対策の1つとして使用される、一般的な防錆塗料や不透明な防食材料は、施工後に鋼材表面を確認しにくく、状態を確認するために塗膜や材料の除去が必要な場合がある。
これらの課題に対してDNPは、建材分野で培ったEBコーティング技術*1と高機能フィルムの設計技術を活用し、鋼材を保護しながら表面状態も確認できるシートを開発した。
【「DNP EB防錆粘着シート」の特長】
1. 屋外曝露試験で2年経過しても錆びない高い防錆性能
錆の主要因である酸素や水蒸気の侵入を抑制することで、鋼材を腐食から保護する。屋外曝露試験では、2年経過後もシート施工部に錆が発生していない状態を維持している。また、約250日の塩水噴霧試験でも、シート施工部に錆の発生は認められなかった。
2. シートの高い透明性により、インフラ施設の点検業務を効率化
全光線透過率(シートを透過する光の割合)が80%以上の高い透明性を有している。屋外曝露試験では、2年経過後も全光線透過率は初期値の90%以上を維持しているため、シートを施工した素材の下地の表面状態を確認できる。これにより、シートの施工後でも鋼材表面の劣化状況を容易に把握でき、インフラ等施設の点検業務の効率化に貢献する。

3. 熱、湿熱、寒さなどにも対応した高い耐候性
熱、湿熱、寒さなどの各種環境促進試験(約1年間)や、メタルウェザー試験*2(1,000時間)後でも、初期値の約80%の粘着力を維持している。環境促進試験(約32カ月後)でも全光線透過率は初期値の90%以上を維持しており、屋外環境での長期使用が可能。
4.さまざまな鋼材の表面に使用でき、簡単に施工が可能
亜鉛系塗装、フッ素系塗装、補修用さび止め塗装など、各種塗装面に対して施工できる。浮き錆や脆弱な塗膜、油分・汚れなどを除去する簡易な下地処理後にシートを施工できるため、プライマー処理*3を必要とせず常温で施工できる。施工者の熟練度によらず、部分補修にも使用できることで、施工負荷を抑えながら効率的な維持管理が可能。
今後の展開
DNPは、本製品を2027年度にインフラ保全分野に提供を開始するとともに、特長である高い透明性を活かして、画像解析などのデジタル技術と連動した事業展開も目指します。2030年度までに関連サービスを含めて累計15億円の売上を目指す。
*1 EB(Electron Beam:電子線)コーティング : 塗工した樹脂を電子線の照射で硬化させる技術。ウレタンやUV樹脂をコーティングした製品に比べ、傷・汚れ・日光等に強く、高い耐久性と実用性、品質安定性を確保できる。製造工程での省エネルギー化やCO₂排出量削減、無溶剤塗工も可能な環境対応技術。
*2 太陽光や雨などの自然環境による材料の劣化を、人工的に非常に速いスピードで再現し、評価する超促進耐候性試験。
*3 塗装や接着の前に行う下地処理で、塗料や接着剤との密着性を高めるために塗布する工程。


