【セラミック分離膜】住友化学、アルミナを高機能化しセラミック分離膜の高透過性を実現

 住友化学は、セラミック分離膜(精密ろ過膜)において、同社が分離膜用に開発した高機能なアルミナを用い、分離膜構造の貫通孔密度※1を高めることで、分離性能を維持したまま透過性能を向上させる技術を実現した。

 同技術は、分離膜において、透過性能を向上させようとすると分離性能が低下するというトレードオフの課題に対し、新たな解決策を提示するもの。

 この技術は神戸大学との共同研究によりそのメカニズムが実証され、科学雑誌『Journal of Membrane Science letters』オンライン版(2026年8月12日付)に掲載された。

 この成果は、開発品が、食品、バイオ、発酵、化学、排水処理など、異物付着や堆積が起こりやすい用途向けの、高性能分離膜の開発に新たな指針を与えることを示すものであり、同社は、今後、分離膜メーカーや装置メーカーに対し、製品の高付加価値化、装置性能の向上、運転安定化に貢献する提案を進める。

 住友化学は、長期的に目指す姿として、イノベーティブな技術で社会課題を解決する企業を掲げています。これからも、革新的技術を通じ、さまざまな産業分野における課題に対し、ソリューションを提供する考えだ。

成果概要
成果のポイント
神戸大学との共同研究により以下を実証
・分離膜において、平均孔径(孔の大きさ)が同等でも、貫通孔密度の違いが透過性能と異物の付着や堆積によるろ過機能低下の挙動を左右する
・貫通孔密度が高い膜では、透過流※2が多数の流路に分散し、局所的な負荷が低下することから、分離膜における孔の閉塞や異物の付着が低減する
・分離膜の高性能化には、平均孔径だけでなく、膜内部の流路構造を含めた設計が重要
・同社が分離膜用に開発した高機能なアルミナは、その特性から分離膜構造の貫通孔密度を高めることに有用であり、分離膜の機能向上に貢献する

背景
セラミック分離膜は、優れた機械強度、耐薬品性、耐熱性を生かして、食品、発酵、バイオ、化学、排水処理など幅広い分野で利用されています。一方で、懸濁液(けんだくえき)や乳化液などの孔への異物の付着が起こりやすい用途において用いられる際、透過性能が低下しやすいことが課題でした。
また、これまで分離膜の性能評価では平均孔径(孔の大きさ)が重視され、その構造については影響が小さいと考えられてきたが、実際には、孔のつながり方や流路の分布によって、透過性能や孔への異物の付着による挙動が大きく変わることから、平均孔径だけにとどまらない構造指標が求められていました。

研究成果
 神戸大学と共同研究を行い、多層構造のαアルミナ管状膜について、膜内部の三次元構造と酵母懸濁液のろ過性能を比較した。
 平均孔径はほぼ同等であるにもかかわらず、本開発品を用いた貫通孔密度の高い膜では、透過流がより多くの流路に分散することで、膜内部への異物の侵入が抑えられ、内部孔閉塞が起こりにくくなり、異物の付着による抵抗が低くなることが確認された。その結果、貫通孔密度の高い膜は、同等の分離性能を維持しながら、定常透過性が3倍超と高い性能を示した。
 これによりセラミック膜の性能は、平均孔径だけではなく、膜内部で流れをどう分配するかによっても大きく左右されることが明らかになり、同開発品が、膜内部の構造制御によって高透過に寄与する材料であることが示された。

研究成果の社会的意義
 今回の成果は、分離膜メーカーにとっては、セラミック分離膜の高付加価値化、差別化につながる知見である。また、装置メーカーにとっては、処理量向上、洗浄頻度低減、運転安定化の提案につながる。

今後の展開
 住友化学は今後、今回得られた知見を踏まえ、アルミナによる構造制御技術の高度化を進めるとともに、分離膜メーカーや装置メーカーとの連携強化を図ってまいく。
 また、食品、発酵、バイオ、化学、排水処理など、異物付着や堆積による透過性能の低下が課題となる分野への適用拡大も視野に、材料ソリューションの提案を進めていく。

※1 膜や多孔質材料において膜の表裏を貫通する孔(貫通孔)の単位面積あたりの数(密度)
※2 膜や多孔質材料を通り抜けて反対側へ流れる流体の流れのこと

あなたへのおすすめ