【産業用AI】シーメンスとIFSが提携、製品ライフサイクル全体を循環させる仕組みを実現

 産業用AIソフトウェアのリーディングプロバイダーであるIFSは2026年6月29日、シーメンスとの戦略的パートナーシップの締結を発表した。この提携は、製造業者が「エンジニアリング上の知見」と「実際の運用現場の状況」を連携させることを支援するもの。両社は産業用AIを活用し、製品ライフサイクル全体にわたって製品価値の向上と生産資産の最適化を実現することを目指す。
 協業は、産業用AI、エンジニアリング、自動化、製造実行システム(MES)の各分野で主導的な地位にあるシーメンスと、産業用AI、企業資産管理(EAM)、フィールドサービス領域に強みを持つIFSの力を結集するもの。両社は協力して、製造業における長年の課題である「工場運用の設計」と「実際の運用実態」との乖離の解消に取り組む。この乖離は、予期せぬダウンタイム、連携の取れていない保守スケジュール、サイロ化した生産データ、サプライチェーンの混乱などを招き、スループット、俊敏性、利益率を低下させる要因となっている。

製造業者が共有する使命
 製造業者は今、既存の資産をこれまで以上に有効活用することが強く求められている。工場現場での生産量の拡大、利益率の確保、機器のライフサイクル全体を通じた価値の最大化、そして変化に対するより高い俊敏性と適応力を備えた対応が求められている。しかし、多くの企業では依然として、生産・保守計画・サプライチェーン管理の各システムが互いに連携しておらず、設計上の意図、実際の稼働状況、サービス戦略が分断されたままとなっている。

産業用AIを中核に
 産業用AIは、このパートナーシップが目指すビジョンの中核を成す。シーメンスとIFSは、産業のパフォーマンスにおける次の時代が、物理世界とデジタル世界の融合によって形づくられるという信念を共有している。すなわち、製造業者が設計意図を実際の運用現場に具現化し、その運用実績をさらなる設計改善へとフィードバックすることで、イノベーションを加速させる。
 シーメンスは、エンジニアリング、シミュレーション、製造に関する包括的な「デジタルツイン」を提供し、IFSは、製品や資産が現実世界でどのように稼働しているかを示すサービス履歴、資産の挙動、運用ライフサイクルデータを提供する。両社は協力して、設計意図と現場でのパフォーマンスの双方に基づく循環型のデジタルツインの構築を目指す。これは、設計、シミュレーション、サービス記録、工場での実行プロセス全体にわたってセキュリティ、ガバナンス、監査可能性が確保され、産業規模での導入に耐えうる信頼性を備えたもの。
 汎用的なAIモデルとは異なり、産業環境では、最適化と俊敏性を実現するために高い精度、信頼性、規制遵守、そして適応力が求められる。安全やコンプライアンス、さらには多額のコストを要する物理資産に関わる意思決定では、わずかな誤りも許容されないため。産業用AIに対する両社共通のアプローチは、こうした産業現場の現実を踏まえて構築されている。
 シーメンス・デジタル・インダストリーズ・ソフトウェアの社長兼CEO、トニー・ヘメルガーン氏は次のように述べている。
 「産業用AIは、エンジニアリングの意図と現実世界でのパフォーマンスの双方に裏打ちされて初めて価値を発揮します。IFSとの連携により、設計、製造、資産ライフサイクルに関するデータを、安全かつ文脈を明確に付与したデータファブリックで接続し、これらの領域を統合します。産業用AIにおける両社の強みを融合させることで、お客様が『実行可能なデジタルツイン』というビジョンのもと、確信を持ってイノベーションを加速できるよう支援していきます」
 IFSのCEO、マーク・モファット氏は次のように述べている。
 「製造業では、工場の現場が設計どおりに稼働することが求められます。シーメンスとの今回の提携は、課題解決に不可欠なピースをそれぞれ持つ2社を結びつけるものです。自律的に判断・行動する『エージェンティックAI』は重要な最前線であり、産業界のリーダーには、循環型のモデルとデータ、そして実際の運用現場でハルシネーション(事実と異なる情報の生成)を起こさない豊富なコンテキストを備えたソリューションが必要です。産業用AIにおける両社の強みを組み合わせることで、設計と現実の間の乖離を埋め、測定可能で確かなパフォーマンス向上を実現できるよう、製造業者を支援します」

あなたへのおすすめ