【熱硬化性CFRP】帝人、自己修復機能と高いリサイクル性を両立した新たな熱硬化性炭素繊維複合材料開発

 帝人は、従来の炭素繊維複合材料(CFRP)と同等の機械的特性を有しながら、加熱による自己修復機能と高いリサイクル性を兼ね備えた新たな熱硬化性CFRPを開発した。この開発品は、所定の温度で短時間加熱することで損傷部位を修復できるほか、簡便な工程によるリサイクルを可能とし、製品の長寿命化と資源循環の推進に貢献する。

背景・経緯
 炭素繊維(CF)に熱硬化性樹脂を含浸させたCFRPは、「強くて軽い」という特長から、航空機や自動車、スポーツ用品など幅広い用途で使用されている。
 近年、地球温暖化を背景に、製品のライフサイクル全体における温室効果ガス(GHG)の排出量削減に貢献する製品へのニーズが高まっている。一方で、熱硬化性CFRPは、溶融や再成形ができず、使用後に発生する廃棄物の多くは焼却や埋め立て処理されていることから、環境負荷軽減に向けた新材料の開発が急務となっている。
 帝人はこれまで、環境配慮型のCFブランド「Tenax Next(テナックスネクスト)」の展開などを通じて、GHG排出量の低減や廃棄物の削減に取り組んできた。
 こうした中、同社は、長年培ってきた高分子材料の設計技術を活用し、従来の優れた機械的特性を有しながら、再成形や樹脂分解によるリサイクルが可能で、さらに加熱による自己修復機能を備えた新たな樹脂を開発した。同樹脂をCFRP に採用することで、環境負荷の低減に貢献する循環型の熱硬化性CFRPを開発した。

開発品の特長
 開発品は、従来のCFRPに求められる強度や剛性などの機械的特性を維持しながら、以下の3つの特長を有しており、製品の製造・消費・廃棄の各段階において、リサイクルの促進と製品の長寿命化による廃棄物の削減に貢献する。
(1)加熱による自己修復機能
 開発品は、所定の温度で短時間加熱することにより、損傷した樹脂層が修復される(図1)。これにより、使用過程で劣化したCFRPを廃棄することなく継続して使用できるため、製品の長寿命化を通じて廃棄物の削減に貢献する。
(2)再成形によるCFRPの高いリサイクル性
 一度成形した従来の熱硬化性CFRPは、含浸されている熱硬化性樹脂が加熱しても溶融および流動しないため、再成形することができない。一方、開発品は、成形後も所定の温度域で流動性を示すため、圧縮成形などによるCFRPのリサイクルが可能。
(3)樹脂分解による炭素繊維の高いリサイクル性
 従来、回収した使用済み熱硬化性CFRPからCFを分離するためには、400℃を超える高温炉で長時間かけて樹脂を燃焼分解する必要があり、大きな環境負荷を伴っていた。開発品は、特定の薬液に浸すことで樹脂を分解できるため、CFRPからCFを容易に分離することが可能。これにより、環境負荷が低く、生産性にも優れた炭素繊維のリサイクルを実現する(図2)。

※この成果の一部は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「サーキュラーエコノミーシステムの構築」(研究推進法人:独立行政法人環境再生保全機構)(JPJ012290)により得られたものである

今後の展開
 帝人は、2028年度に同開発品のサンプル提供開始を目指し、大学や研究機関とも連携しながら研究開発を進めていく。軽量化と耐久性向上、環境負荷低減のニーズが高い、航空機、自動車、産業機械などを中心に、幅広い用途へ展開を図る。
 さらに、将来的な量産化および社会実装を見据え、材料設計から部材設計、リサイクルプロセスまでを一体的に最適化する開発を推進するとともに、パートナー企業との連携による用途開発およびサプライチェーン構築を進める。

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