【バイオガス発電】埼玉工業大学、最適化に向け産学連携で深谷モデルの共同開発開始

 埼玉工業大学は、工学部の生命環境化学科・微生物応用研究室(室長:秦田勇二教授)機械工学科・熱エネルギー工学研究室(室長:高坂祐顕教授)が、地元深谷市のセキネおよびクリーンテックサーマルと産学連携により、地産地消の「バイオガス発電」の高効率化を実現する共同研究プロジェクトを開始した。
 この研究は、化石燃料に頼らないカーボンニュートラルな水素エネルギーの活用により循環型社会に貢献することが期待される。また中東情勢による供給が不安定な石油資源に依存しないエネルギーの活用と、災害時に電力インフラが利用できない事態が発生した場合にもエネルギーの利用を可能にする。
※バイオガス発電
 バイオガス発電は従来破棄される資源をリサイクルでき、循環型社会の構築に貢献する利点がある。燃料の1つとして、家庭や工場から廃棄される食品廃棄物や家畜の排泄物など農業残渣などをメタンガス化して、発電した電気を供給することができる。

バイオガス発電施設と発酵タンク

概要
 この研究プロジェクトは、深谷地域において発生する家畜の排泄物などを活用したバイオガス発電において、メタンガス発生過程を最適化する産学共同研究。従来は経験則的に実施していたバイオガス発電を、科学的な解析結果に基づき、適切な温度管理と栄養分補給により、発酵タンク内の微生物が生産するメタンガスの発生量(発電量)を増大化させる。地域の有機物からエネルギーを生み出す「バイオガス発電」を本研究により最適化し、社会実装技術の確立を目指す。
経緯と現状
 埼工大工学部の微生物応用研究室・熱エネルギー工学研究室合同異分野研究会は、2023年4月に開始した。さらに、企業も合同する形で、再エネ研究会が2024年6月より活動を開始。
 これらの研究会で得られた研究成果と知見を活かし、セキネが新規建設した発酵タンクに、メタンガスの発生を最適化するための設備と制御メソッドを実装して実証実験を行っている。
 これまでの研究経過は次の通り。
●メタンを効率よく生産するためには、メタン発酵タンク内でバイオガス(メタン)の生産活動をしている(主役の)メタン生成菌を特定することが大事。メタンガス生成菌は、世界中でこれまでに約150種以上も発見されている。それに加えて、発酵タンク内には、メタン生成菌以外にも多くの微生物が共存している。さらに解析を難しくする要因として、メタン生成菌は「酸素に触れると死んでしまう(偏性嫌気性)」という特徴があり、実験室で人工的に育てる(培養する)のが非常に難しい生き物。そのため研究では、発酵タンク内の全微生物のDNAを直接丸ごと解析するという工夫をして、主役となるメタン生成菌の特定解析を開始することとした。
●実際のバイガスプラントのガス発生源は微生物であるので,原料の過剰投入や温度変化などの急激な環境変化を避けるなどの慎重な操作が必要.バイオプラント内部の温度を微生物にとって生活しやすい温度に調整するために,バイオプラント内外の合計15カ所に温度センサーを設置し,さらに,バイオプラント内を循環する保温(場合によっては保冷)のための循環水の温度や質量流量を計測することで,バイオガスプラントの熱のやり取りを正確に推定する.さらに伝熱学的な工夫を施すことによりバイオプラント内の環境温度を適切に管理し細やかな調整をおこなうことでバイオプラントを最適に動作させる検討を開始した。
異分野のプロが集結
 メタンガスを生み出す主役は、発酵タンクの中に存在する「微生物」。微生物が高いパフォーマンスを発揮するように、4つの専門家が結集した体制で、深谷モデルの開発を推進する。
<組織・機関:専門分野/本研究での具体的/アプローチ >
1.埼玉工業大学 工学部 生命環境化学科・微生物応用研究室(秦田勇二教授):微生物学
 タンク内の膨大な微生物から遺伝子解析によりメタンガス生成の「主役」を特定し、発酵ガスが最も活発になる条件を提案。廃棄物から最大のエネルギーを引き出す要因を解明する。
URL:  https://www.beseibutsuapplication.com/
2.埼玉工業大学 工学部 機械工学科・熱エネルギー工学研究室(高坂祐顕教授):伝熱工学
 巨大な発酵タンクの温度をデータ解析に基づき最適コントロール。適切な温度管理により発酵効率を高める事により、高効率なエネルギー生産システムを構築する。
3.セキネ:畜産技術・プラント運営
 深谷市内で実際にバイオガス発電プラントを運用中。大学での科学的な分析結果を基に構築されたノウハウを実機プラントへ反映し、効果の実証を行い、ひいては地域エネルギーの安定供給を担う。

4.クリーンテックサーマル:食品リサイクル
 分離装置を活用し、廃棄食品を資源化に有効活用する事業を行っている。大学の研究によって明らかになった、メタンガス生成に適した栄養素を含む食品資源を収集・分離・供給を通じて、研究成果の社会実装を支える役割を担う。
 特に、PETボトル、缶、瓶、パックなどの容器包装入り廃棄食品から中身を効率的に取り出す設備を保有している点は大きな強みであり、これまで有効活用が難しかった食品資源もバイオガス発電の原料として活用が可能となる。
深谷から世界を救う環境に優しい「地域循環システム」の確立へ
 プロジェクトでは、2024年6月に研究会を発足し毎月の継続的な研究会を開催し、徹底的な課題の洗い出しと改善を続けている。その成果は、深谷市内に建設したセキネの最新プラントで行う実証実験にて検証される。「微生物の活性を高める成分管理」と「発酵タンク内温度制御・熱効率の最適化」をデータに基づいて実証して、地域発の高効率バイオガス発電プラントシステムを目指す。
 さらに余剰電力を水素で貯蔵し、水素エネルギーの地産地消を目指す。この深谷モデルは、日本国内はもちろん、世界中のあらゆる地域へ展開できる可能性がある。
 地元の地域の特色を活かした課題解決(地産地消)から出発点し、「石油依存からの脱却」という地球規模の環境イノベーションへと発展することが期待できる。

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