【負極集電体用フィルム】東レ、LiBの負極集電体に適用可能な高性能フィルムを開発

 東レは、集電体材料に求められる4特性(酸化・還元耐性、金属密着性、機械特性、熱特性)を全て満たす負極集電体用フィルム*1を世界で初めて*2開発した。この開発フィルムにより、リチウムイオン電池(LiB)の集電体*3を従来の銅箔から、樹脂フィルムを基材とするフィルム集電体に代替することが可能となった。なお、同開発フィルム適用の集電体にて、銅箔と同等の電池性能を実証し、量産機での製膜も実現しており、顧客向けにサンプル提供を開始した。同開発フィルムの活用により、LiBの軽量化に寄与することが期待される。

 負極集電体は、電池の負極から電流を取り出す導電部材であり、従来は銅箔が使われてきた。さらなる高エネルギー密度化に伴って軽量化ニーズが高まるなか、樹脂フィルム基材に極薄の銅層を設けたフィルム集電体*4の開発が進んでいる。PETフィルムは正極では樹脂フィルム基材として使用可能ですが、還元性の強い負極ではPETフィルムが劣化し、他の樹脂フィルム基材でも、耐還元性*5、金属密着性、機械特性、熱特性を同時に満たすフィルム基材は存在しなかった。

 東レは、独自のポリマーアロイ*6を用いた高分子設計技術とフィルム製膜技術による高次構造制御を駆使し、上記の4特性を満たす新たな樹脂フィルム基材を開発した。同開発フィルムを適用した負極用フィルム集電体は、耐還元性に優れ、銅層との高い密着性に加え、銅箔同等の強度と低熱収縮性を備え、実電池評価で従来の銅箔集電体と同等の性能を示した。

 同開発フィルムの適用により、従来の銅箔に比べ、集電体の重量を約50~60%削減でき、電池セルでも約10%の軽量化が見込まれる。また、重量エネルギー密度向上に伴い、モバイル機器の駆動時間延長や、ドローン・電気自動車(EV)の電力消費効率向上、航続距離延伸が可能となります。さらに、軽量化で生じた重量余力を活かして活物質を増量することで、当社試算条件*7では最大約10%のEV航続距離延伸の可能性がある。また、需要が逼迫する銅の使用量を削減し、材料コストの安定化にも貢献する。

 東レはすでに、同開発フィルムの標準グレード(厚さ4.5µm)を量産機で広幅製膜することに成功し、顧客へのサンプル提供を開始しており、さらなる薄膜化も検討中。今後、モバイル機器やドローン、eVTOL*8などの中小型電池での実用化を進めるとともに、EVやエネルギー貯蔵装置(ESS)など大型電池への適用も視野に入れている。

 東レは今後も、コア技術である「高分子化学」「ナノテクノロジー」およびフィルム製造技術を活用し、電池の高性能化・軽量化・省資源化に繋がる先進的な素材の研究開発・実用化を推進し、新しい価値の創造を通じて社会に貢献していく考えだ。

【図1】 従来負極集電体(銅箔)とフィルム集電体の構造比較 
【図1】 従来負極集電体(銅箔)とフィルム集電体の構造比較 
【図2】 銅箔集電体および各種フィルム集電体の負極適用時の特性比較
【図2】 銅箔集電体および各種フィルム集電体の負極適用時の特性比較
【図3】実電池サイクル試験における容量維持率の推移 <br>(社内評価、単層ラミネートセル、電池容量:30mAh)
【図3】実電池サイクル試験における容量維持率の推移
(社内評価、単層ラミネートセル、電池容量:30mAh)

※1 集電体用フィルム
集電体に用いられる樹脂フィルム基材を指す。本開発フィルムは、集電体材料に求められる4特性(酸化・還元耐性、金属密着性、機械特性、熱特性)を全て満たした集電体用途の樹脂フィルム。
※2 世界で初めて 
同社調べ。2026年7月時点で商業化されている集電体用フィルム製品との比較において。
※3 集電体
二次電池の正極・負極において、活物質層と接して配置され、電極内で生じた電流を効率よく集めて外部回路に取り出す役割を果たす導電部材。リチウムイオン電池では、正極にアルミ箔、負極に銅箔を用いるのが一般的である。
※4 フィルム集電体
樹脂フィルム基材の表面に極薄金属層(正極:アルミ、負極:銅)を形成した複合構造の集電体。従来の金属箔と比較して軽量・薄型化に優れる。
※5 耐還元性
リチウムイオン電池の負極環境下において、電解液中で生成する還元性物質などによる化学的な分解や劣化を受けにくい性質。負極は強い還元性雰囲気となるため、集電体用フィルムの長期耐久性および電池性能維持の観点から極めて重要な特性である。
※6 ポリマーアロイ
2種以上の異なる高分子を複合化することにより、単一樹脂では実現困難な特性を発現させた複合材料。
※7 当社試算条件
フィルム化による軽量化で生じた重量余裕を、N/P比を一定に維持したまま、正極・負極活物質および電解液の増量に充当したものとして算出した。
※8 eVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)
電気を動力源として垂直に離着陸が可能な航空機の総称。「空飛ぶクルマ」とも呼ばれ、都市部の新たな移動手段として、世界各国で実用化に向けた開発が進められている。

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