【CO2固定】住友大阪セメントと大成建設、グリーンイノベーション基金事業で人工石灰石を用いた製造時固定量1立米当たり110kgコンクリート製品の現場実証を完了

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクトの一環である「多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術の確立」(以下、本事業)において、住友大阪セメント大成建設は、同事業の成果物である「人工石灰石」を用いたCO2固定コンクリート製品の製造・生産性、品質・耐久性の実証を完了した。
 国土交通省直轄工事の公共工事にこのコンクリート1m3当たり最大約110kgのCO2を固定したCO2固定コンクリート製品を使用し、約3年間のモニタリングにより、コンクリートの環境性能と構造性能が両立することを実証した。
 今後は、本技術のさらなる高度化と適用範囲の拡大、指針類の整備を進め、さまざまな環境や条件での実現場での施工を重ねるとともに、さらなるCO2削減を目指して技術開発を進め、2050年カーボンニュートラル達成に向け、社会インフラ分野における温室効果ガスの排出量削減に貢献する。

図1 人工石灰石を用いたCO2固定コンクリートのプレキャスト製品

背景
 住友大阪セメントは2021年度からグリーンイノベーション基金※1の本事業※2において、カルシウムを含む廃棄物とセメント工場の排ガス中のCO2から「人工石灰石」を製造するデュアル・リサイクル「炭酸塩化技術開発」と、この「人工石灰石」を原料とした「カーボンリサイクルセメント」の製造・コンクリートなどへの利用を目指す「炭酸塩利用技術開発」の2つの技術開発を進めている。
 カルシウムをアルカリ源とするセメント、コンクリートはCO2固定化ポテンシャルが高いこと、生成物となる炭酸塩が化学的に安定している、すなわち長期のCO2鉱物固定が可能なことからセメント系材料には大きなCO2削減が期待されている。
 一方、建設分野では、資材製造や施工時に排出されるCO2の削減に加え、回収したCO2を資源として活用するカーボンリサイクル技術の実装が求められている。コンクリートは社会インフラに不可欠な材料であり、その脱炭素化が重要な課題。このような背景から、本事業では、回収したCO2を人工石灰石として固定・資源化し、セメントやコンクリート材料として活用する技術を開発してきた。

今回の成果
 実証では、2022年10月、人工石灰石を用いたコンクリート製品を国土交通省直轄工事※3の2つの現場に適用した。
 寒冷地およびトンネル坑内という異なる環境条件を選定し、「成瀬ダム原石山採取工事(秋田県)」で落蓋式U形側溝を、「荒島第二トンネル工事(福井県)」で縦壁付矩形水路を実装した(図1~3参照)。約3年間の現地モニタリングと各種試験により、製造・生産性、品質・耐久性の観点からCO2固定と実用性の両立を実証した。
(1)CO2の固定とコンクリートの実用性を確保
 CO2固定量の異なる4種類のコンクリートを適用し、用途や要求性能に応じた選択を可能とした。コンクリート1m3当たり最大約110kgのCO2を固定できることを確認し、コンクリートの環境性能と構造性能が両立することを実証した。
(2)既存設備による製造・生産性と品質を確認
 コンクリート製品は、従来の製造設備・製造サイクルで製造でき、通常製品と同様の検査基準を満足して出荷できた。特別な設備更新や工程変更なく導入できることを確認した。
(3)実構造物での耐久性を実証
 凍害による劣化が厳しい寒冷地と、自動車排ガスのCO2で中性化の進行※4が懸念されるトンネル坑内でCO2を固定したコンクリート製品の耐久性を、構造物の供用中に実証した。約3年間の現地モニタリングとサンプリング試験を行い、ひび割れや表面剥離はなく、強度低下や鉄筋腐食も確認されなかった。

図2 成瀬ダム原石山採取工事(落蓋式U形側溝)
図3 荒島第二トンネル(縦壁付矩形水路)

今後の予定
 グリーンイノベーション基金事業では同実証と並行し、人工石灰石を用いたコンクリートの材料特性や施工性の評価、同コンクリートを用いた構造物の構造性能を検討し、設計法や技術指針類の策定、標準化にも取り組んでいる。成果の一部は2026年3月に改正されたセメントの日本産業規格(JIS)※5に反映された。
 本事業は2026年度より、委託事業から補助事業(事業フェーズ、2026~2030年度)に移行した。今後は、引き続き、この事業フェーズにおいて同技術のさらなる高度化と適用範囲の拡大、指針類の整備を進め、公共工事をはじめとする社会インフラ分野での本格活用に向けCO2の有効利用を一層加速し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する。
※1 グリーンイノベーション基金
 日本の掲げる「2050年カーボンニュートラル」に向けて、官民で野心かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などに対して研究開発・実証から社会実装まで最長10年間継続して支援する事業。同基金事業はグリーン成長戦略で実行計画を策定している重点分野または「GX実現に向けた基本方針」に基づく今後の道行きが示されている主要分野を支援対象としている。
 グリーンイノベーション基金事業 特設サイト
※2 本事業
 事業名:グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発/多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術の確立
 事業期間:2021年度~2030年度
 事業概要:CO2を用いたコンクリート等製造技術開発
※3 国土交通省の直轄工事
 「成瀬ダム原石山採取工事(秋田県)
※4 コンクリートの中性化の進行
 一般に、コンクリートは強アルカリ性であるため鉄筋の表面に不動態被膜が形成され、内部に水分や酸素が浸入しても鉄筋は腐食しない。コンクリートが表面から大気のCO2など、酸性成分を吸収して強アルカリ性を失うことを中性化という。中性化した範囲では不動態被膜が破壊されるため、鉄筋の防さびの観点から中性化の進行(速度)が耐久性評価において重要。
※5 改正されたセメントの日本産業規格(JIS)
 JIS R 5210「ポルトランドセメント」、JIS R 5211「高炉セメント」、JIS R 5212「シリカセメント」、JIS R 5213「フライアッシュセメント」が改正され、省資源化およびCO2固定化に向けて、人工石灰石など石灰石と同等の品質をもつものの使用を可能にした(改正:2026年3月23日)。

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