【半導体】FLOSFIA、6インチサファイア基板上での酸化ガリウムエピタキシャル成膜に成功

京大発スタートアップであるFLOSFIAは、世界で初めて実用化を進める酸化ガリウム(α-Ga2O₃)パワー半導体において、6インチ(150mm)サファイア基板上でのエピタキシャル成膜に成功し、膜厚の面内ばらつき約±3%を達成した。6インチは炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の量産で主流の口径であり、パートナーは既存の6インチ量産ラインを活用して、酸化ガリウムパワー半導体の量産を早期に立ち上げることができる。さらに、これまでの3~6インチの結果から、8インチ(200mm)でも面内ばらつき±4%以下を見込めることを確認した。2025年12月に発表した4インチウェハ製造技術の実証に続く本成果により、独自のミストドライ(R)法による低温・常圧成膜の大口径化は着実に進んでいる。同社は本成果を足がかりに、「ポストSiC」の本命として酸化ガリウムパワー半導体の社会実装を加速する。
背景:パワー半導体のウェハ大口径化
パワー半導体産業では、ウェハ口径の拡大により1枚当たりのチップ取得数を増やし、製造コストを下げる取り組みが進んでいる。SiCでは6インチが量産の主流で、一部のメーカーでは8インチへの移行が始まっている。シリコン(Si)系パワー半導体では8インチ(一部12インチ)のラインが主流。新材料がパワー半導体メーカーに採用されるには、こうした既存の量産ラインに適合できることが重要な条件となる。
成果:6インチサファイア基板上でのエピタキシャル成膜
ミストドライ(R)法に改良を加え、6インチサファイア基板上にα-Ga2O₃エピタキシャル膜を成膜した。膜厚の面内ばらつきは約±3%で、初期実用化レベルの目標としていた±4%以下を達成。クラックがなく、異物欠陥の少ない良好な膜が得られている(図1)。

8インチ化への見通し
3インチ、4インチ、6インチで膜厚の面内ばらつきを比較したところ、口径が大きくなるほどばらつきは増えるものの、その増え方は緩やかになる傾向を確認。この傾向から、8インチ(200mm)でも面内ばらつきを±4%以下に抑えられる見込み(図2)。

本成果の意義:既存ラインの活用で早期量産へ
6インチ化により1枚のウェハから取得できるチップ数は4インチの約2.2倍(面積比)となり、エピタキシャル成膜だけでなくデバイス前工程全体でチップ当たりの製造コストが下がる。また、6インチサファイア基板はLED産業向けに大量に流通しており、安価かつ安定的に調達できる。既存の6インチラインを持つSiCや窒化ガリウム(GaN)-LEDのメーカーであれば、設備投資済みの前工程装置を使えるため、新規投資を抑えて早期の量産立ち上げが可能。同社は「MOSFETの性能実証」と「エピタキシャル成膜の大口径化」を社会実装の両輪と位置づけており、本成果により大口径化が着実に前進した。
今後の展望
FLOSFIAは今後、2026年中に8インチサファイア基板上での成膜実証を進めるとともに、大口径成膜で得た知見をMOSFETをはじめとするGaO(R)パワーデバイスの開発とパートナーとの量産プロセス構築に活かしていく。あわせて、技術資産のライセンス提供やエピタキシャルウェハ供給を通じてパートナーシップを広げ、EV・AIデータセンター向け電源などへの早期の社会実装を目指す。
謝辞
本研究成果の一部は、防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度(JPJ004596)」の支援を受けて実施した。
FLOSFIAの天田健嗣代表取締役社長は次のようにコメントしている。
「今回の成果は、パートナーの皆様の量産ラインでGaO(R)パワーデバイスを量産していただくための重要な一歩です。本成果を足がかりに8インチ化とMOSFETの性能実証を加速し、酸化ガリウムパワー半導体の社会実装を進めてまいります」


